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ウィークリーN

第143回●2005年8月7日(日)

 足跡 30  「養護学校と福祉施設」


 前回も書きましたが、高等部へ入学すると進路を考えなければいけなくなります。それまでは卒業後の進路は、あまり考えたくない問題でした。つまり厳しい現状からは障害児に輝かしい未来像が描けず、目を背けたい問題だったのです。重い宿題を抱える8月30日頃の小学生の気分にも似ているかもしれません。

「できればうちの子、留年させてもらえんろうか。」高等部の子供を持つお母さんからときおり聞かれたジョークです。普通校の留年制度は、養護学校にはありません。いくら学校に残りたくても、3年たてば社会の現実に押し出されるのです。

 学校は1対1という、これ以上ないほど十分な対応環境が整っています。しかも、先生によって細かく様々に工夫された授業が受けられる。こんな良いことはないと思っていました。それに比べて、福祉施設は職員数も比較にならないほど少なく、しかも選べるとは言い難い。支援費制度によって、利用者は施設を選べると言うけれど施設は満杯で、現実は逆。保護者にとっては、不安ばかりです。若草でも2年前までは卒業生との交流がゼロで、施設の生の情報が入ってこないことも、不安の1つでした。

 では実際、施設にお世話になってみてどうだったか?初めの頃、長女に学校との違いを聞いてみたら、「通所センターではね、トイレとかで急がんでえいき、助かる」とのことでした。トイレで「遅くなってごめんなさい」と言う長女に、「時間かかってもいいよー」と優しく対応してくださる職員さんの言葉が嬉しかった、と。
 意外でした。親は学校の細かく組み立てられた時間割こそが最高と思っていたのに、うちの子はそれに少ししんどい思いをしていたのです。自分で身の回りのことができない彼女にとっては、休み時間を気にしながら「早くトイレをすませて移動しなきゃいけない」ことがストレスだったのでしょう。「センターでは、時間がゆっくり流れている」と表現した卒業生もいます。

 そういえばかなり前、授業時間に遅れて叱られている姿を見たことも思い出しました。その頃の長女は時計もろくに読めず、トイレも介助してもらい、移動させてもらう…という状態だったので、「今何時だと思ってるの!?」と怒る先生に、(そんなこと言ってもこの子はなまけて遅れてる訳じゃない。先生なのに、なぜそれがわからないんだろう)と疑問に思ったものです。

 もう一つには、学校では先生と生徒という縦の関係が、センターでは職員さんと利用者が横の関係であることの違いがあります。年上の職員さんに「○○ちゃ〜ん」と、友達のように呼びかける長女に、「失礼でしょ」と言うと、「だって、そう呼んでくれて嬉しいって言ってたよ」とケロッとしています。おいおい、それでいいのか。

 私が一番驚いたことは、職員さんの献身的な対応です。休日返上なんて当たり前で、実によく働いていらっしゃいます。長女の施設では、7月に1泊の徳島へのキャンプ、月末の鏡川まつりの3日間、屋台を出す(センターの代休はなし)、そして今週末の地域交流祭と、イベントが目白押しです。職員さんは「交代で休みは取ってますから」とおっしゃっていますが、その大車輪の活躍ぶりには感嘆します。

 人数が少ないからこそ、必死でやらなければまわっていかないということもあるのかもしれませんが、とても新鮮でした。これこそ民間のサービスだ、と感心したものです。長女の施設の夏休みは10日間で、昨年までの学校の45日間に比べると夢のようです。これでも施設とすれば長い方らしいですが、うち4日間は外部にもオープンにしてサマースクールを開くというのですから、やっぱりすごい。施設にもよるのでしょうが、積極的に社会貢献していくぞ!という職員さんの気概を感じます。

 後輩のお母さん方、卒業後も嘆くことはありませんよ。私と長女は今、「学校も施設も、どちらもいいな。どちらもすてき」と思えます。そう思えるのは、ありがたいことですね。

 これで施設と学校とがうまく連携できれば、障害児・者を取り巻く環境はもっと良くなるのではと思います。ある方が教育長にお話ししたアイデアですが、例えば夏休みに施設に先生がインターンシップに行き、人手を増やして子供達を少しでも受け入れる、なんていいんじゃないでしょうか。先生も生徒も卒業後の生活を生で見られて、大変参考になるのではと思います。

 
 
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