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第474回●2011年1月22日(日)

「人生のみごとな幕引き

 先週、私の小学校の恩師が81歳で亡くなったと新聞の死亡広告欄で知りました。
「野島先生がガンらしい」とはお正月の同窓会で小耳に挟んでいましたが…。

 「なお、通夜並びに告別式は無宗教により相営みます。」 という文章に
先生らしい自由な雰囲気が感じられ、最後のお別れに参りました。

 野島忠直先生は、私の小学校5・6年生の時の担任の先生でした。当時40代のベテランで、優しい笑顔の先生でした。専門は美術。毎日朝礼の後、生徒が1人モデルになって、クロッキーという10分間のスケッチをクラスで行っていました。

 中学生の頃、同窓会で先生のお家にみんなでお邪魔した時、帰りに車で自転車ごと家まで送って下さったことも、良い思い出です。 母に禁止されていたマンガや小説を書くことを「好きなことをやりなさい」と優しく応援して下さり、子どもの可能性を大切にしてくださった先生でした。

 「病気一つしたことがなかった」そうですが、昨年の夏からガンで闘病なさっていたという先生。私たちが小学生の頃からの長年のヘビースモーカーでしたが、去年の6月にピッタリたばこを止められたそうです。ご家族が「遅すぎるやろう」と笑うと、「病院の先生が一生懸命病因を調べて下さっているのに、吸うのは先生に失礼だから」と答えられたそうです。そういうふうに、「人のため」をまず考える先生でした。

 いよいよ具合が悪くなられた時、先生は「葬儀は高知市の斎場で、無宗教でするように」と遺言なさったそうです。
いつも人を大切になさった先生のお人柄を偲んで、告別式の会場にはロビーまで人があふれていました。


 式場の入り口には先生のお描きになった絵が小さな個展のように飾られ、
白い菊ではない、色とりどりの洋花がそれはきれいでした。
先生の温かい絵に、懐かしさがあふれました。

 告別式では、先生の今までのご経歴が紹介され、どんな人生を送られたのかが改めてよくわかりました。長年にわたり高知大学附属小学校で教員を務められたこと、小学校の山の家のお世話を長年してくださったこと、町内会など地域のためやご自身の信じる政治にも力を尽くされたこと…。

 その後、お二人の娘さんが、時に笑いも交えながら「お父ちゃん」を語られました。明るく幸せなご家庭の雰囲気があふれていました。そして孫代表、友人代表、教え子代表の言葉が続く中、献花が行われました。宗教に縛られず、故人を偲ぶ言葉がたくさんあふれている告別式は初めてでした。

 昨年夏からの闘病以来、先生も覚悟を決められ、でも相変わらず冗談を言いながら、「平穏な社会をつくるために世界情勢をしっかり見ながら頑張れ」と周りに言い残して、人生を終えられたそうです。

 …野島先生、カッコ良すぎます。最後まで、生き方のお手本を見せて頂きました。

 長い列に並び、祭壇の前で黄色いカーネーションを持ち、たたずみました。ハート型の色とりどりの花の中で笑っていらっしゃる先生の遺影と対面した時、本当に「死に様は生き様」だと感じました。告別式なのに、明るい、温かい気持ちになったのです。「いいお式だった」としばしば結婚式で言いますが、告別式でそう思えたのは初めてでした。

 私も人生の折り返し時点を過ぎ、命の終え方を考える時があります。
願わくば先生のように 、故人が主役の式を行いたいと思いました。

「私のお葬式では、みんなに笑ってもらえるような明るい式がいいなあ」と中村に言うと、
「それには高齢まで生きて、ご家族も納得がいくようにしないといけませんね」。

確かに、その通りですね。
           

    (写真は、イメージです)

 ところで余談ですが、みなさんご存知でしょうか?「ご冥福をお祈りします」というおなじみの言い回しが、実は適切ではない場合があることを。私は数年前に知人の僧侶から聞いて以来使えなくなり、実に不便になってしまいました。

 ご冥福とは「冥土で幸福になること」。極端な言い方をすると、「地獄でお幸せに、となってしまう」などと聞いて大変驚きました。「じゃあ、何て言えばいいの?」と聞くと、「慎んでお悔やみ申し上げます」「お念仏申し上げます」などが良いと教えてもらいました。でも故人がキリスト教なら、「お念仏」はおかしいですよね。

 結局、「慎んでお悔やみ申し上げます」「哀悼の意を表します」に落ちつくようです。
でも最も大切なのは亡くなった方への感謝、ですよね。



亡くなった野島先生に、心からの感謝を捧げます。
先生、 ごゆっくりお休み下さい。
より良い社会をめざして、私にできることを頑張ります。

 

 
 
 
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