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ウィークリーN
 

第502回●2012年8月4日(土)

 名前も知らないお客さん」 

 

(中村 覚)

 一年、いやもうちょっと前だと思います。ある日の夕方5時頃、まだ辺りも十分明るい時でした。2階でテレビを見てくつろいでいると、下の玄関から話し声が聞こえてきました。聞き慣れない声と母の声です。何を話しているのかは、2階にまで はっきり聞こえてきませんが「あぁ お客さんが来たのか」と思い、そのままテレビを見ていました。
 ところが、その後もなんとなく聞こえてくる下からの会話に違和感があったのです。

 今しがた玄関に入ってきたお客さんを、母がすぐトイレに案内しているのです。家によく来るお客さんになら、いちいち場所を案内する必要はありません。「一体、誰?」と私はだんだん気になり始め、テレビを消して下からわずかに聞こえてくる会話を聞いていました。すると、どうも初めて家に来たお客さんだということがなんとなくわかりました。

 それから10分くらい経ったでしょうか、お客さんは帰っていきました。
「あれ、トイレを借りに来たお客さんだったのかな?」

 すぐ下に降りて行って「初めてのお客さんみたいだったけど、トイレを借りにきたお客さん?」と確認すると、「そうよ」と言うわけです。「えっ?」いやその親切心(?)はわからなくもないけれど、このご時世、知らない人にトイレを貸すなんて「コンビニじゃないんだから」というのが私の感想でした。

 そしたら母が言うのには「いや、急にうちの前でお腹が痛くなったようだったから」と。この時代錯誤な感覚はある意味、さすがだと思いながら話を聞いていると、このお客さんというのは確かに、初めて来たお客さんにかわりはなかったのですが、ご近所の小学校5〜6年生の女の子だったんです。

 「それを早く言ってよ!」ってなもので、「そうだったのか、なぁ〜んだぁ」と
心配していたのが急に笑い話です。

 見ず知らずのお客さんと思っていたのが、実は近所の女の子。母はこの子を日頃から知っていました。この子は、町内の掃除の時、自分の家の前の掃除が終わると、私の家の前の掃除も手伝ってくれる、なんとも気立ての良い子です。こんな女の子ですから、そうとわかれば「(今回のような事情じゃなくても)よく来てくれました。どうぞ、どうぞ」ってなものです。

 では、なぜこの子がトイレを借りに来たのか?いつものようにこの子は学校から帰ってきました。実は家の鍵はこの子のお姉ちゃんが持っているそうですが、この日に限ってなかなか帰ってきてくれません。そうこうしていると急にお腹が痛くなり、「これはちょっと困ったな・・・そうだ、中村のおばちゃんの家に行ってみよう」ということになったようです。

 母は母で、ひょんなことからこの子がうちに来てくれたのをいいことに、当時、買ってまだ間もないテレビのタイマーや予約の仕方を教えてもらったのでした。


 そして、これはつい最近のことです。私が出先から帰ってきて、家の門を開けようとした時、この子がちょうど後ろから見ていたようで、「開けましょうか」と声をかけてくれました。松葉杖をついていると門の開閉がわずらわしいこともあり、「お願いします」と頼みました。おかげで楽チンをさせてもらったので「ありがとう」とお礼を言うと、「近所ですから」と一言残し、さっさと自分の家に帰っていきました。カッコ良過ぎる小学生です。

 でも考えてみたら、この子が小学何年生なのかはっきり知りませんし、下の名前も知りません。むこうも同じだと思います。でもちょっとしたやり取りから生まれる近所のつながりは、そういったものを越えたところにあるのかなと思います。

 

 
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