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第642回●2015年4月25日(土)

 「TDR@ ディズニー・フィロソフィー」

 先週、私は岡山の講師の友人と一緒に、東京ディズニーリゾートに30年ぶりに行って来ました。
目的は「人の心に魔法をかける」ディズニーの現場について、元ディズニーランドの教育担当をなさっていた「マネジメント&ネットワークオフィス」の小松田勝先生と、「リファイン」の下平久美子先生のお二方からディズニーランドの人材育成について以前よりご教示を頂いており、現場で実際に見て・感じて・学びを得たかったのです。
今回からシリーズで、東京ディズニーリゾートについてご紹介しましょう。


(ちなみに「東京ディズニーリゾート」とは、「東京ディズニーランド」と「東京ディズニーシー」、関連ホテルやショッピング施設を含めた呼び名です。このうち「東京ディズニーランド」と「東京ディズニーシー」を「パーク」と呼びます。)

第1回は、ディズニーのフィロソフィー(哲学)についてです。


 ディズニーランドはロサンゼルス、フロリダ、東京、フランス、香港と世界で5つありますが、ディズニー公認のパークで世界一の広さを誇るのが、東京ディズニーランドです。運営会社は日本のオリエンタルランドで、意外にもディズニーは出資していません。1983年に開業し、一昨年30周年を迎えています。
 ちなみにディズニーランドでは、お客さまを「ゲスト」と呼びます。「カスタマー(顧客)」ではなく、「ゲスト(大事なお客さま)」。ディズニーランドという大きな家に、大切なお客さまをゲストとして招待しているというコンセプトなのです。
 対して従業員は素晴らしい場所を提供するための「キャスト(役者)」と呼ばれています。「東京ディズニーリゾートにお越しいただくすべてのゲストの皆さまに、ハピネスを提供することがキャストの役割」とされており、「世界中でもっともすばらしい場所」を夢見てやってくるゲストに「魔法をかける」重要な存在です。
 ディズニーのフィロソフィー(哲学)は「全世界の人々に幸福な場を提供する」です。創業者のウォルト・ディズニーは、人が感動するのは「大自然」と「完璧に作られたもの」、そして「人と人とのコミュニケーションである」と確信していました。ディズニーランドは単なるエンターテイメント施設ではなく、ゲストに思いやりのある温かいサービスを提供することこそが目的なのです。
また、次のようなフィロソフィーもあります。

 ・ ファミリーエンタテイメント (家族みんなで楽しめること)
 ・ パークはいつまでも未完成
 ・ すべてのゲストがVIP (お客さまを差別しない)
 ・ ショーは毎日が初演

「ショーは毎日が初演」とは、スタッフは毎日同じことをやっていても、お客さまの立場からするとすべてが初めての体験なので、ショーは新鮮な気持ちで演じなければならないということです。まさに「初心忘るべからず」ですね。


 改めて、このコンセプトこそが高いホスピタリティを提供できる秘密でしょう。「大切なお客さまの高い期待値に応えるため、役者として最大限の温かなもてなしをする」と捉えると、仕事の仕方は自ずと変わってくるでしょうから。

 またディズニーランドでは、大切な運営理念を設けています。
「SCSE」という行動基準で、この順番で優先されます。

S…Safety (安全性)
まず最優先の項目は、安全性。せっかくの楽しい思い出をケガや病気にならないよう、安全性を最重要視しているのです。そのためにゲートの入口では一人ずつ手荷物チェックを行っています。
また、アトラクションでは年齢や身長の制限、健康面の注意があります。パークには平日でも数万人、ピーク時には1日10万人を超えるゲストが訪れます。中には少し体調が悪くても強行軍で来る人もいるでしょう。そのためパークには救護所もあり、休むことができます。

 東日本大震災の時パークを訪れていたゲストは7万人、帰宅困難でパークで一夜を過ごしたゲストは2万人いました。スタッフが現場判断で毛布、食料(商品のお菓子など)、寒さよけの段ボールやゴミ袋を配給したことは、いまだに語り草です。
パークでは年180回の防災訓練をやっているため、「すぐに普段通りのことができた」そうです。
C…Courtesy (礼儀正しさ)
ディズニーランドのサービスには、近隣諸国からも視察団が来るほどです。サービス業ではよく「ホスピタリティ」という言葉が使われます。「心のこもったおもてなし」、「思いやり」などの意味です。
しかし、ディズニーランドでは「コーテシー」(礼儀正しさ)と言います。ゲストをお迎えしもてなすために、まず礼儀正しさを徹底することを教えるそうです。

 ただ明るいあいさつをすればいいと言うことではなく、ゲスト一人一人に公平で礼儀正しく親しみやすいおもてなしをする。居心地の良さの根底には、礼儀正しさあってこそなのです。
 
 そしてこれは、他のどの職種についても言えることだと思います。このことについても後の回で考察してみたいと思います。

S…Show (キャストとしてのショー)
ディズニーランドでは、ショーが命!ってそのショーではなく。(笑)
ここでは、「ゲストを楽しませる演技をすること」です。 ですから、パーク内にあるすべてのものがショーで、キャストはそのショーの配役なのです。身だしなみや立ち居振る舞い、施設の点検、清掃など、「毎日が初演」の気持ちを忘れずにショーを演じ、ゲストをお迎えすることを指します。
 だから、掃除もショーなんですね。
パークで有名な「カストーディアル」という掃除をする人気職種があります。
常にパークを巡回していて、ゴミがたまる以前に回収するのでいつもきれいですが、
彼らの動きが実にきびきびして気持ちが良いのに感心しました。
ゲストに見られていることを意識しているからでしょうね。
E…Efficiency (ゲストのための効率性)
ディズニーランドはボランティアではありませんから効率性は重要ですが、この効率性とは会社にとってではなく、ゲストにとってというのが驚きでした。安全や礼儀正しさ、ショーを無視して効率を優先しても、ゲストにハピネスを提供することはできないことから、安全・礼儀正しさ・ショーを心がけ、チームワークを発揮することで、効率を高めることが「効率性」なのだそうです。

 利益ばかりを追求した効率性はお客さまにとっては不都合を生じることがあります。そうならないようにディズニーランドではゲストの数が6万人くらいに達した時、自動的に入場制限がかかるようです。収益<ゲストの安全 ですね。

 こうした素晴らしい理念を持っているディズニーランドですが、マニュアル至上主義ではないことが非常に重要だと思います。もちろんマニュアルはあるのですが、新人キャストは研修でこう教わるそうです。

「マニュアルに書かれていることは70〜80%の仕事です。残りは皆さんがゲストに対応する時点で、最も適切で正しいと思う方法を実行して下さい。」 だからこそ、震災の非常時にも素晴らしい対応ができたのですね。
「ディズニーランドは特別」ではなく、これは他のどの職種でも取り入れられることです。
 
 「自分の職責を完璧に果たし、次に余力をつけて周囲をフォローしていくこと」。
自分の仕事を楽しみながら、オペレーションのレベルを高められるシステムになっていることと、
現場に権限委譲がなされていることが重要なのだと再認識できました。

 さぁ〜、次回からはパークについて ご紹介していきますね。お楽しみに♪

   

参考書籍:「人の心に魔法をかけるディズニーランドの教え」 「ディズニー式 サービス哲学」小松田 勝

 

 
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