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ウィークリーN
第99回●2004年10月3日(日)

「祖母の帰省」


 世間はイチローが新記録達成!ということで盛り上がっておりますが、それについては沢山の方々がコメントすると思いますので、あえて別の話題を…。

 私の祖母は、93歳です。90歳前までは元気に独り暮らしをしていましたが、ここ3年ほどは、グループホームで生活しています。先週、祖母は久しぶりに自分の家へほんのちょっと帰りました。わずか2時間ほどでしたが…。

 祖母は70歳まで現役で看護婦を務めました。その後生まれた私の障害のある長女を何年も、本当によく可愛がって世話をしてくれたものです。

じっと庭を見る

 残念ながら現在の祖母はかなり痴呆が進んできて、もうほとんどものもいわず、表情も変わりません。
「おばあちゃん、家に帰るかね?」と母が聞いても、「帰る」と言わなくなってだいぶたちます。でもやはり帰りたいだろうと、人手が揃い、天気も良くなったある日、2年半ぶりに施設に「外出」願いを出し、家に連れて帰りました。

 玄関の高い上がりかまちは大きなバリアでしたが、なんとか車いすを上げることができました。大好きだった庭をじっと見ながら、祖母は何を思うのでしょう。
祖父の写真   その後、おやつを食べる時にふと
「おばあちゃん、庭を見ながら食べる?それとも 部屋の中を見ながら?
それか、…おじいちゃんの写真を見ながら?」と聞いてみると
「写真を見る」とボソッとつぶやきました。

 実は祖母は祖父が結核で入院していたため、ずっと別居生活を強いられてきました。 この家でもほとんど一緒に生活したことはないまま、祖父は27年ほど前に他界しました。祖母の思いがけない答えに母は「まあ、やっぱり夫婦やねえ…」と涙ぐんでいました。

ボンボン時計

 祖母の家では、懐かしいボンボン時計がいまだに現役で時を刻んでいます。それに何十年も前のレコードプレーヤー、扇風機、時代物のミシン…。部屋の中には、昭和の香りがいまだに色濃く残っています。 それらを眺めていると、不思議に心が落ち着きます。

 そうして、わずか2時間ほどの滞在で、祖母はグループホームに帰りました。

 グループホームの職員さんは「別に1泊じゃなくてもいいのよ、数時間でもいいから、家に帰らしてあげられたら、それでいいからねえ」と言ってくれましたが、本当にそうだと感じました。また、祖母を家に帰らせてあげたい…。

 祖母の安らいだ表情を見て、私自身も何か大切なものを思い出せたような気がしました。

 

   
 
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