第1035回 「高知の名建築、織田歯科医院②」
12月10日
ちょっと幕間ができてしまいましたが、前々回の高知の名建築、国の登録文化財でもある織田歯科医院のご紹介、続きです。
今回は中へ入りましょう。(クリックすると大きくなります)
1階の両開きドアをくぐると、こうなっています。
中央が廊下。右手はかつての待合室でしょうか、左手には時代を感じる曇りガラスのモダンな受付が。一枚ガラスなので価値があるものです。ダークブラウンの腰壁は大正時代を彷彿とさせ、郷愁を誘います。建物は全部、当時のままだとか。
現在この洋館は ウエディングプロデュース会社「レ・プリュ」が借り受け、挙式や披露宴会場として使われています。二階の診察室に続く階段は手すりも装飾的で、ここで結婚式の前撮りをするのでしょうね。天井付近も、装飾的なラインが入っています。
いかにも手彫りといった感じの手すり。上は神社などで見られる、擬宝珠(ぎぼうし)っぽいデザインですね。和洋折衷の感じを受けます。
右手の、元・待合室をのぞいてみましょう。
びっくり!バロック建築の劇的空間です。天井のデザインが個性的ですね。
天井にはシャンデリアを吊す根元に、花びら型のシーリングメダリオン(立体的装飾)があります。
階段を上がると、中央付近に着きます。
ここは2階で、階段はペントハウス(塔屋)に続いています。
木製引き戸を開けると、コの字形に部屋が広がっています。
こちらは、建物の北側。2階は格天井と言われる造りで、診察室、受付と電話室があったとか。当初 天井はもっと高かったが、エアコンが効かないため下げたとか。
木製の上げ下げ窓がすべて残っているのは、いかに大事に保存してきたかということの証でしょう。
こちらは、東側。元は診察台が並んでいたようです。腰板は杉。
フランスのアンティーク家具を置き、近代建築の雰囲気をうまく醸し出しています。
面白かったのは、建物の北東角に歯科技工士さん専用の狭い階段があったことです。
長い年月で階段の角はすり減り、上がり下りの時、何人もすべり落ちたとか。
様々なエピソードが、これからもここで綴られていくのでしょう。
今年で、築97年。大切に守られている織田歯科医院は、幸せな近代建築だと思います。