第700回 「バリアをバリューに~ユニバーサルマナー」
6月10日
このコラムも、皆さまのご支援の賜物で700回目を迎えました。いつもお読み下さいまして、ありがとうございます。
さて、「ユニバーサルマナー」という言葉をご存じでしょうか。
「自分とは違う誰かのことを思いやり、適切な理解のもと、行動すること」です。外出に不安を抱える高齢者や障害者、ベビーカー利用者など自分とは違う誰かの視点に立ち、接し方を身に付け行動することは、特別な知識ではなく「こころづかい」の一つだという考え方です。
「ハード(環境や設備)を変えることができなくても、私たち一人一人のハート(心)はすぐに変えられる!」
現在、ユニバーサルマナーを必要とする人は、高齢者が3300万人(人口の約26%)、障害者788万人(約6%)、3歳未満の子ども315万人(約2%)と言われています。
「今まで“バリア”として捉えていたことも、考え方や周りの人次第で、“強み”や“価値”に置き換えることができる」「車いすの私だからこそ、伝えられることがある。」大阪市のコンサルティング会社「ミライロ」の垣内社長の理念です。
「ミライロ」が提唱して「日本ユニバーサルマナー協会」が設立され、2013年にユニバーサルマナー検定を始めたそうです。協会の代表理事の垣内さんや「ミライロ」講師の方々はご自身も車いすでいらっしゃいますが、障害を価値に変える「バリアはバリューだ」という考え方は、希望になります。
ユニバーサルマナーの検定があると知ったのは最近で、早速ユニバーサルマナー検定3級を受講しました。ちなみに「バリアフリー」は「障害者や高齢者のバリアを取り除く」ということで、「ユニバーサルデザイン」は「国籍や性別、障害の有無にかかわらずすべての人に使いやすいモノやサービスのありかた」です。
私も二つの大学で、教員免許取得の際に必須である「介護等体験」の事前指導を8年ほど担当させて頂いています。実習で学生が初めて高齢者や障害児などと接する時にどうしたらいいのか、マナーとコミュニケーション法を伝えているのですが、その中でスタッフの中村にも「コミュニケーションでの配慮」をテーマに、体験を交えた話も担当してもらっています。
その中でよく訊かれる質問に「何か手助けをしたいのだが、具体的にどうしたらいいのかわからない」ということがあります。検定の中でも、これについてふれられていました。
たとえば障害のある方に手助けしようと思ったら、まずは「お手伝いできることはありますか?」と尋ねること。同じ車いすでも一人一人の状態は違うので、助けて欲しいこと・自分でできることは判断できません。この問いかけがあれば、「自分でやりたい」方の思いも尊重できるというわけです。
「ミライロ」では障害を価値に変えるバリアバリューの視点から、障害者やその家族、関わる企業や団体を支援することを目的として、2016年4月に「バリアバリュー財団」を設立しました。障害者の自立や社会参加の支援へつなげ、ネットワークを構築し、雇用創出へつなげたいということです。
この財団は早速、4月の「平成28年 熊本地震」で、被災地への福祉用品支援を行っています。避難所を中心にノーパンク車いす・白杖・筆談ボード・褥瘡(じょくそう)防止用クッションなどを送る活動を行っているとか。ノーパンク車いすはがれきの上を走行でき、比較的軽く、混雑する避難スペースで場所を取らないように背折れ収納ができるものにしたそうです。また、クッションは褥瘡を防ぐためには必需品ですが、意外と知られていないことでもあり、その細やかな心遣いには感銘を受けました。
熊本地震の障害者支援を目的とした寄付も呼びかけていたので、弊社もコラムの700回記念を兼ねてささやかな寄付もさせて頂き、日本ユニバーサルマナー協会にも入会しました。
協会の「30秒でわかる!災害時のユニバーサルマナー」は、ぜひ多くの方に読んでいただきたい内容です。
◆視覚障害のある方が避難所で困ることは
・掲示板の情報が読めない
・周囲の状況がわからず、不安 など
◆車いす利用者が避難所で困ることは
・移動のサポートが必要
・長時間同じ姿勢でいると危険 など
◆知的障害のある方が避難所で困ることは
・否定・注意がわからない
・パニックを起こしやすい など
◆聴覚障害のある方が避難所で困ることは
・館内放送が聞こえない
・周囲の状況がわからず、不安 など
高齢者や障害者に、思いはあっても声をかけられない悔しさ…「どうすればいいかわからない」が、知識を得ることで少しでも解消していければ、そしてより良い社会になればと願っています。