第1074回 「吉兆?」
9月21日 中村 覚
久しぶりに晴れた昼下がり、南北の窓を開けて風を通します。明日からまた天気が崩れると聞けば、なるべく長い時間 開けておきたいのです。夕方も近づきはじめた頃、窓を閉めるため隣の部屋へ。すると じゅうたんの上に1本の鳥の羽が落ちていました。
長さは28㎝ほど。羽が部屋に落ちているなんて初めてのことなので、手に取りまじまじと眺めます。考えてみれば羽をこんなにゆっくり見るのも初めてかもしれません。羽自体、そんなに珍しくはないですが、公園や道端に落ちていても、正直どこかちょっとバッちぃイメージがあって…。ところが家の中で拾うと何の抵抗もありません。(笑)
そうか、そうか。根本はちょっとだけ透明な感じで、感触としても柔らかいプラスチック。まるで人工物です。写真の羽は既に根元の方がほころんでいますが、拾った時には上から下まできれいに整った状態でしたので、羽ペンのようでした。ところで、何の鳥の羽なのか。長さが28㎝ですから、普通に考えて体長50㎝ぐらいはあるだろうと。カラス? でも黒い羽ではないし。家の周りに畑や田んぼ、川もないわけで。何の鳥?
こういう時はですね、以前 教えてもらったのですが、一旦、対象物(羽)をスマホで撮影します。その後、撮った写真を開いて「Googleレンズ」で検索すればネット上に数多ある情報の中から類似するおおよその物を表示してくれます。便利ですね。
結果は「シラコバト」。写真や文章で次から次へと情報が出てきます。シラコバト? 初めて聞く名前ですが、鳩です。説明を読むと、主に埼玉県東部を中心に生息している国指定の天然記念物…。やったぁっ!貴重な鳩の羽が我が家に降ってきた! …となるわけはなく(笑)ここは高知県。だいたい体調が50㎝もある鳩がいるのか? 私がイメージする大きさとも一致しません。
でも、実を言うとこれで良いのです。1枚の羽がひらひらと空から降ってきて、それは理屈に合わない珍しいきれいな羽。何かの吉兆か。物事はあまり問い詰めてはいけない。(笑)追及しなければならない事と、追及すると面白味がなくなる事があると思います。羽は後者です。
後日、友人に「これ、どう? 天然記念物の鳩の羽。実は謎の羽。」冗談半分に見てもらいました。するとパシャリと写真を撮って友人もすぐに「Googleレンズ」です。(笑)表示されたのは私の時とは違い、商品としての羽ペンの写真がズラリ。ますますわからない。(笑)「これは、ちゃんと調べた方が面白くないか?」と言うので、ちょっと私も気が変わってちゃんと調べることに。
傷まないように羽をファイルに入れて、動物園へ。「すみません、これは何の鳥の羽か、知りたいのですが。」担当の方がすぐに来てくれました。「いや、実は部屋に落ちていて、スマホで調べたら天然記念物で~」と経緯を説明すると、こちらを見ながら少し間をおいて…
「アオサギです。」
「サギ? あのどこにでもいるサギですか?」
「そうです。」
「じゃぁ、珍しくもなんともないですよね。」
「そうですね。多分、お家の上を飛んでいる時に落ちてきたのでしょう。」
(内心:それはちょっと…。厳しすぎる現実かな。)
「園にも自然生息しているのがいますから、羽もよく落ちていますよ。」
「自然生息って、外から飛んできたヤツですよね?(笑)」
サッと図鑑を開いてさらに詳しく説明をしてくれました。右半分の図は便宜上、羽の各部分が色分けされています。胴体の中央から少し下にある黄色で区分されている「三列風切羽(さんれつかざきりば)」。私の拾ったのはこの部分とのことでした。瞬時にそんなことまでわかるんですね。
ちなみに写真の左側に写っているのは私の拾った羽。右側に写っているのは図鑑と一緒に持ってきてくれた羽。もう どこやかしこに落ちているのでしょう。(笑)
結論。サギの羽は吉兆の証。昔からそうだったことにしておきます。
と、ここまで書いて、後はいつものように代表の筒井に原稿を送りました。すると、アオサギにもう一歩踏み込むための情報を頂きました。
それによると、昔から本当にアオサギは縁起が良い鳥らしいのです。
古代エジプトに「ベヌウ」という聖鳥がいたそうで壁画に描かれた絵を見ると、どうもアオサギが原型だったのではないかと。そしてこのベヌウこそが不死鳥フェニックスのイメージにつながっていく。つまりアオサギがフェニックスになっちゃったんですね。(笑)
ふざけて文章の終わりに吉兆の証と書いたものの、ビックリしております。