第1077回 「松葉杖と骨折」

10月14日          中村 覚

「今まで松葉杖をついている人は、骨折している人だと思っていました。」
看護学校でのレポートにこういった感想が数枚ありました。とても斬新です。というのも自分自身が骨折ではない理由でもう20年以上使用しているからです。でも一般的には こういった認識になるんですね。

そう言えば、たまにスーパーのレジなどで、気さくに「事故ですか?」とか「(完治するのに)しばらくかかりそうですね」など声をかけてもらうことがあります。「あぁ、はいぃ。」と返事をして…。じゃっ まっ そういうことにしておいてください(笑)~でないと「話せば長いんですが、実は事故ではなくて~」となると、昔話に花が咲くことになりかねません(笑)

よくよく考えてみれば、こういった「事故ですか?」という言葉の言外に
「松葉杖」=「骨折」というシンプルな図式があるのかなと思います。

先日、本屋でのこと。正面から小学校の低学年ぐらいの女の子が歩いてきます。こういう時は「珍しい!」という気持ちを満面にたたえてこちらを見てくるのが、だいたいのパターンです。でも、この時は違いました。すれ違いざま、「骨折」の一言。

もしかしたら、この子は幼くして骨折をして松葉杖の経験があるのか、身近な誰かが骨折をして松葉杖になったことがあるのか、はたまたテレビで見て~。とにかく、一つ物知りなわけです。小さい頃は物を知っていると周りの大人から褒められる、それを嬉しく思う! かわいらしいものです。

それほど広くない店内。少し時間を置いてこの子にまた会いました。どうも先ほどから親御さんとは少し離れて別行動をしているようです。今度は私のすぐ後ろを歩きながら「骨折。」なんて感じの良い子なんでしょう(笑)

世の中、やっぱり「松葉杖」=「骨折」なんですね(笑)

この話は笑えると思い、あとで友人に話したところ、「骨折ではないことを、なぜ その子に教えてあげなかったのか」と言うわけです。なぜって…。そんな簡単に言いますけど、どこの誰かも知らないし、どのタイミングで言えというのか。急に後ろを振り返り、「骨折ではありませんっ!」これはヤバいヤツです。 なかなか、言うに言えない時があるんですって(笑)

今度は広いショッピングモールでのこと。入口に設置されている車椅子を借りて、買い物が終わり元の位置に返す時です。車椅子を降りる前にまずカバンを肩にかけて~と、やっていると、バカにカバンが重いのです。

結果、カバンの紐が車椅子の金具に引っかかっていたわけですが、それは後でわかったことです。「なんで?」とやみくもにカバンを引っ張っていた時です。「何かお手伝いできることはありませんか?」と横から声をかけられました。

見ると70代ぐらいの女性です。カバンが引っかかっていることは、この方に教えてもらいました。カバンを一旦 持ってもらい、それから車椅子を降りて、松葉杖に戻った時に「おかげで助かりました。ありがとうございます。」と言うと「こちらこそ、お会いできて良かったです。」これには恐れ入りました。

そして「実は今まで3度 骨折の経験があり、その都度 松葉杖をついたことがありますので…」とにっこり店内に入って行かれました。

私は 骨折はしたことはないけれど(笑)。