第1090回 「ナンバーワンの称号」
1月19日 中村 覚
ある日、父親が新しい車に買い替えました。私はまだその頃 免許は持っておらず、そもそも車に興味がなかったので「車、買ったのかぁ」ぐらいのことで。
でも、普通 買い替えるなら前もって家族に、「実は今度、買い替えるつもりだから」とパンフレットの1冊や2冊広げて説明でもしてくれればと。しかし、そんな一般論を望むべくもなく…。ただ その時、新しい車のナンバーは「3355」。なんともわかりやすい数字だなとは思いました。
その車もとっくに廃車にして、ずいぶん時間が経った頃です。四字熟語を調べている時にたまたま「三三五五」の文字が目に入ってきました。
※「三三五五」:少人数でまばらに行く、散在するさま。
日常に溶け込み、珍しくもない言葉です。ただ 辞書に“ある”からといって、必ずしも使うとは限りません。私はほぼ使わないかなぁ。でもこの字を見ると先ほどの車の記憶がよみがえり、ページをめくる手も気持ち止まります。そんな時、「もしかしてこれがナンバーワンじゃないのか?」そう思いました。
なんのナンバーワンかと言うと、「四字熟語の総画数が最少ナンバーワン」です。ただの思い付きですし どうでもいいことなのですが、ナンバーワンを見つけた!となると悪い気はしません。
ところがやっぱりただの思い付き。一人悦に入ってそれで終わりです。多分、これ関連で検索をかければもっとスゴイ四字熟語があるのかもしれません。でも逃がした魚が大きかったとしてもかまいません。たまたま見つけたものが面白かった。これで十分です。
それからまた時間が経ち、「已己巳己(いこみき)」という四字熟語を見つけました。
※「已己巳己(いこみき)」:互いに似ているものをたとえていう語。
已、己、巳、それぞれの字が似ているというのが理由だそうです。この昔の人の遊び心と、音の響きまで簡素化を目指したような字の並びが面白くてメモしました。しかしながらとっくに風化したようなこの四字熟語、どこで使うのか。ただ総画数が少ないという意味では「三三五五」よりも上なんです。一文字ずつ見ると~
「已己巳己」 → 3画+3画+3画+3画=12画
「三三五五」 → 3画+3画+4画+4画=14画
上には上がいる!
え? こんなどうでもいい話はもういい? ちょっとお待ちを。「已己巳己」、これ じっと見ていると何かに似ていると思いませんか? 何か思い出しませんか? 昔よくあったラーメンのどんぶりの模様に似ていませんか。そう思うのは私だけ? ちなみにラーメンのどんぶりの模様は雷紋(らいもん)といって、已己巳己とはなんの関係もありません。悪しからず。
上の2つは偶然見つけたものですが、最後にもう1つ何かあれば、それなりに形になるかなと。話の三段オチみたいなものです。こうなれば偶然を待ってはおれません。不本意ながら自分から取りに行くために辞書を開きました。発表します!ナンバーワンは「一上一下(いちじょういちげ)」。
※「一上一下」:上げたり下げたり、場面に応じて適切な対応をとるたとえ。
類義語は臨機応変。そう聞けば 少し身近に感じないでしょうか。多分、この先も使うことのない「一上一下」ですが、ナンバーワンです!ネットで裏も取りました。すると「一上一下」と同数の総画数がもう一つ見つかりました。「一五一十(いちごいちじゅう)」です。
※「一五一十」:初めから終わりまで。最初から最後まで。すべて。
「一上一下」「一五一十」共に8画。そして共に今後 使うことなし。こんな話も今後することなし!お疲れさまでした!(笑)