第1102回 「追手前伝説、隠された遺構~後編」
4月13日
前回に続き、追手前高校の改修工事に伴って再発見された建築についてご紹介します。「これは『追手前伝説』に載せたかった!」と思ったものもありました。
1階の西側トイレの横には、アーチに続く生徒出入り口、その向こうに地学準備室があります。(2022年撮影)
改修前には雑然としていたこの辺りですが…
改修工事のため片付けられたこの廊下を見ると、今回新たな発見がありました。
よく見ると、柱の下の部分、ここだけタイルが貼られています。なぜでしょう?
そして生徒出入り口のアーチに続き…お気づきでしょうか。
「窓の上に、アーチが見えてますね」と事務長さん。「ホントだ!」と私は大興奮!
以前はこの前に沢山の物が置かれていたので、まったく気づかなかったのです。
こちらの、地学準備室の中に入ってみると…
なんと、美しい2連のアーチが!
今まで聞いたこともなかったのですが、右の壁の向こうと合わせると元々は3連アーチだったことがわかったのです。これは新たな発見でした。
残念!幻の3連アーチ、「追手前伝説」に載せたかったなあ!実はこの美しいアーチの形状に より注目して頂けるよう、ここの写真だけ本に白黒で載せたのです。
アップで見ると、後からはめ込まれたことがわかる、窓枠。当時3連アーチがあるって相当珍しい作りだったと思うのですが、一体ここは建築当時、何だったのでしょうか?
帰ってからすぐに「追手前伝説」を開きます。手前味噌ですが、昭和6年の建築時の設計図が載っているのでこういう時に便利なんです(笑)
現在は1階奥が生物室、その手前が生物準備室、地学準備室となっていますが…
建築当時は奥が博物標本室、手前が鉱物生理教室、そして生徒昇降所でした。
生徒昇降所かぁ。現在の地学準備室は、生徒用の玄関だったわけです。なるほど!
玄関ホールなら3連アーチが並んでいるのも納得です。後で、アーチの途中を区切って壁を造り、一部屋増やしたのですね。出入り口の北側の壁は ブロックで作られたような粗雑な造りだったので(なんでここだけ?)と思っていたのですが…謎が解けました。思えば、柱の下のタイルも玄関らしいデザインと言えます。
奥の生物室は、区切られて部屋にしていた壁の一部をはがしコンクリートの構造が見えていました。「壁真」とかの文字や数字が書かれています。多分、建築当時のものでしょうね。
築93年もたっているのに、まだ新たな驚きや感慨をくれる、追手前高校の建築には 心を奪われっぱなしです(笑)「長寿命化工事」の行く末など、これからも目が離せません。
前編・後編にわたってお付き合い下さった皆さま、ありがとうございました。