第1104回 「絵の具あれこれ」

4月20日         中村 覚

趣味の絵をちょこちょこ描いて25年程になります。12色や24色など、箱入りでセット販売している絵の具を買うのですが、こういった基本の色には入っていない物は単品で後から買い足すこともあります。ある時、ショッキングピンクか何か、ちょっと珍しい?色を単品で買い、それを車に置いてそのまま忘れていました。たまたま乗り合わせた友人がそれを見て、「歯磨き粉か?」と。

おもしろいなぁと思いました。友人にすれば日頃から絵の具になんか用事がないわけですからパッと見、歯磨き粉に見えるのかぁと。私には斬新でした。

このように買い足す絵の具もあれば、基本の色に入っているのに、たいして“使わない色”というのもあります。ただの好みの問題だと思うのですが、私の場合は緑・黒・茶色などがそれにあたり、新しくセット買いをするたびにたまっていくわけです。使わないことに変わりはありませんが、捨てるのはもったいないし…。

ある時、この余って使わない絵の具で額を塗ってみることにしました。
100円ショップに行って、白い額縁を買ってきて塗ってみる。要らない絵の具と100円の額の組み合わせですから失敗を恐れる必要もなし。そして出来上がった額に自分の絵を入れてみる。自己満足も極まるわけです。

当初は絵の具の再利用ぐらいに思っていたものの、同じ絵でも額の色によって雰囲気がけっこう変わるんだなぁと。そうとわかれば“使わない色”にこだわらず、他の色でも何個か塗ってみました。実験みたいなものです。手前みそで申し訳ないですが、この2枚の写真をちょっと見てもらえればと。

白黒の全く同じ絵なのですが…。やっぱり、この絵は青の額の方が良いかな。いや日を置いてから見るとやっぱり赤の方が良いのかなぁ、などと考えます。そんなの、どっちでもいいと言えば、そうですけども。ところでこういった自己満足をやっている私に、良い刺激をくれる友人がいます。

ある時、もうかなり古くなった絵の具が中で固まってフタが開かなくなっていました。仕方なく歯でフタを固定して無理にねじ開けようとしていると、急にニュワッと妙な感触が。びくともしないフタの下部分から中身が破れ出て口の中に入ったのです。変な味でしたが、それよりも とにかく口の中がピリピリしたことは鮮明に覚えています。忘れもしない、赤い絵の具の記憶です。

しばらく経って、これを友人に話すと
「じゃあ 青やったら、どんな味やろうね?」
青い絵の具も口に含めってか? ヤベ~な こいつ(笑)

これも同じ友人です。
私がいつも黄色だけ早くなくなるので、黄色は大事に使っていると話すと
「納豆に入ってるカラシあるやんか? あれで塗ったら? 黄色で。」
「そりゃ カラシ、家にあるけど…。塗ったら カビ、生えるろ!」

で、思ったんです。悪いのは私です。もっとまともに取り合ってくれる相手に話すべきなのに懲りてない、と(笑)

でもこの「ひと事丸出し」の反応のおかげで、趣味と良い距離感を取れているのかと思ったりもします。