第1132回 「虫との思い出」
11月9日 中村 覚
気が付けば、もう11月。今日は立冬、暦では冬の始まりということです。
今年は暑さ続きで秋がなかったような気もします。月並みな表現ですが、あっと言う間に一年が…。このあたりで記憶の整理がてら、今年の虫の思い出ばなしを2つ。
ある夏の日。朝からセミが鳴き、今日も暑くなるぞと。あの高音は耳に堪える、そんな日の事でした。
外を何気なく見ていると、何かがおかしいような。たいしたことではないので最初は気のせいかと。でも、やっぱりちょっとおかしいぞ。
何か、ヘンでしょ?
枝の先の部分が不自然です。幹から枝が出てそこからまた枝別れするはずが…
ご存じの方は「ハイ、ハイ、それね」ともうお分かりと思います。でも私は「え、…虫?」と、すぐに状況を呑み込めませんでした。
枝に擬態している「ナナフシ」は初めて見ました。子供の頃、カブトムシに始まりカナブン、トンボ、カマキリなど身近な存在でした。田舎の祖母宅に行けば、セミを取って虫カゴがぎゅうぎゅうになるまで詰め込んだり、規格外の大きなクモを見たりして驚きました。でもナナフシは見たことがなかったです。
もちろん 虫に対してあの頃の情熱はとっくにありませんが、それでも「なんじゃ、こいつは? ヘンなヤツ」と。ちょっと興味が出て、棒の先で突っついて久しぶりの虫の観察です。「あっ、 落ちた」突っついている内に下に落ちてしまい、どこにいったのかちょっとわからなくなりましたが
見つけて、ちゃんと言ってやりました。枝に擬態しているより、草の茎に擬態している方がずっとわかりにくくて、良いんじゃないの?
ナナフシは木の枝に擬態する虫で「七つの節を持つ木の枝のような虫」という意味の「ナナフシモドキ」が略されたものだそうです。
昆虫というのはどれもそうだと思いますが、友好的な顔はしてないので、犬、猫のように「かわいい、かわいい」する気にはなれませんでした。
次は、暑かった夜の出来事です。
日が沈んでからも30℃という日は普通にありました。夜なのに車内でクーラーをつけなければならない暑さに違和感を覚えながら本屋に行った時の事です。電灯やネオンに虫がたかっています。店の入り口に「カメムシに注意」と張り紙があり「そりゃ 店にも入ってくるだろうなぁ」と。
それから数分後です。雑誌をパラパラと見ていると、「痛ッ!」と首筋に激痛。あまりの痛さに即、体が反応してバチンッと叩きました。
足元に転げ落ちたのはカメムシ。「?」カメムシが刺したの? カメムシって刺すの? 初めてのことでよくわかりません。でもすぐに手と首が臭いだしたので、やっぱりそうなのかと。
でも それどころではありません。刺されてから20分ぐらいはずっと痛くて、痛くて。以前ハチに刺されましたが、その時と同じぐらい痛かったです。痛いし臭いしビックリで家に帰りました。
後からネットで調べたら、刺すカメムシがいるとわかりました。でしょうよ。 刺されましたし(笑)この暑さでカメムシも どうかしちゃったんでしょうか。冗談です。刺すヤツは最初から刺すらしいです。
刺されてから調べて、刺すヤツがいると確認。どこか滑稽でしょ(笑)
刺された傷痕は3週間以上残っていました。いや、もっとかも。もちろん治りましたが、当初は、これはもうずっと残るのかな?と心配していました。
多分、忘れられないだろう虫との思い出でした。