第1133回 「比叡山 延暦寺」

11月16日             中村 覚

「明るい」「楽しそう」「優しそう」などは、人物や物を評する際に上位にくるチェック項目ではないかと思います。これは当然なわけです。だってわざわざ不機嫌そうな人に寄っていったりはしないわけですから。

ところがです。「恐さ」が魅力という場合もあります。例えば、不動明王、天狗、般若、熊、トラなど、どれも「人」ではないですが(笑)これらが仮にもっと優しそうだったとしたら、魅力は半減?ではないでしょうか。

これは「元三大師(がんざんだいし)のお札 (おふだ)」です。別名「角大師(つのだいし)護符」というそうです。一般的にお札と言えば、活字が書いてあるものを連想するのではないでしょうか。私自身そうでした。でもネットでこの画像を見た時に「!っ」。ちょっとだけ恐いのです。その恐さが魅力です。書かれているのは人ではなく、妖怪?

調べてみると、実在した元三大師というお坊さんのお札でした。時は平安時代、世の中に疫病が流行ります。その時に人々を救うために、元三大師が鏡に自分の姿を写して心を集中させて瞑想に入ると、鏡に映ったのは骨ばかりの鬼の姿。その姿を弟子に描き写させ、お札として刷らせます。このお札を貼った家は疫病や災厄にかからなくなったという話が残っています。

「毒は毒をもって制す」ではないですが、疫病、災厄に対しては凄みが必要なのかなと。これは私の勝手な解釈です(笑)

そしてこの元三大師の御廟(霊廟を敬っていう語)やお堂が比叡山 延暦寺あることを知りました。
比叡山には行ったことがなかったので、観光がてら行ってみることに。この切り口だと誤解を招きますね。ほとんどの寺院に行ったことがありません(笑)

行ってわかったのですが、とにかく広いです。延暦寺というのは比叡山にある境内地に点在する約100の建物の総称であり、延暦寺という一棟の建物があるわけではありません。そして山内を三つに区分しています。それを三塔と言い、それぞれに本堂があるそうです。

では、その三塔(3つのエリア)を簡単に説明してみます。
●東を「東塔(とうどう)」
比叡山延暦寺の中心で国宝の根本中堂や阿弥陀堂など重要な堂塔があります。

●西を「西塔(さいとう)」
釈迦堂と西塔鐘楼は共に国重要文化財です。

●北を「横川(よかわ)」
後の世に名僧といわれる親鸞、日蓮、道元などが修行をした地。横川中道堂や元三大師堂があります。

3つのエリアをすべて丹念に見て回ると1日がかりになるとネットにありました。これは全くオーバーではないと行ってわかりました。見どころがとにかく多いのです。

目当ての元三大師堂は横川にあるので、最初の東塔や次の西棟のエリアを走り去り、そのまま横川エリアへ。この間、有料のドライブウェイを通るのですが、歩行は禁止です。歩いて3エリアを回る方のための歩道は別にあります。

因みにですが、パンフレットによると歩いて移動した場合、東塔→西塔まで約30分。そして西塔→横川までは約90分。移動だけで合計120分=2時間かかります。車だと東塔から最後の横川まで合計約13分。文明の利器です。

横川エリアの駐車場に到着です。ちょうど団体客を乗せた大型のバスと一緒になりました。11月ですから、秋の紅葉シーズン!でも今年の紅葉はまだ先のようでした。巡礼受付の所に看板があり「元三大師堂まで10分」と書いてあったと記憶しています。漠然とですが、思っていたほど遠くはない。ありがたいことです。ですが、私の場合はそうサクサクは進めません。道がアップダウンだったので、けっこう疲れました。

駐車場から元三大師堂まではアスファルトの道ですが、途中にある御廟へ行くための左に曲がる細い道は未舗装でした。松葉杖の先が小石や苔、湿った土で滑るので時間はかかるし、疲れるし…。しかも視界に御廟が入ってきません。あの先を曲がればあるのかな?とにかく気になります。

そんな時、ちょうど前方から歩いてくる男性がいたので「すみません、あとどれくらいで御廟に着きますか?」と聞くと男性は少し笑顔で「日本語、わかりません」中国の方のようでした。「日本語、わかりません」は日本人が海外に行った際の「アイ、キャント、スピーク、イングリッシュ」みたいなものだなぁと(笑)

結局、御廟までは往復30分ぐらいかかりました。

元のアスファルトの道まで戻ってきて、まずは休憩です。この後、元三大師堂へ。お堂の前の広場でまた休憩。今度はベンチに座ってゆっくりと。疲れを取った後、お堂に入り、お札を頂いて~、頂いたと言ってももらったわけではありません。500円です。(笑)

先程、休んだベンチのある広場まで戻ってくると、このエリアまで特別に侵入を許可された郵便局の車が入ってきました。配達の方が下りてきます。千載一遇!これはありがたい! 自分の車を止めてある駐車場まで乗せてもらおうと。歩いたら多分15~20分…いえ疲れているのでもっとかかるかも。

車なら1分ぐらいですが、規則として乗せてもらえないだろうと。いや規則以前の問題で、知らない人など乗せたくないだろうなぁ…。

結局 声はかけずに、歩いて駐車場まで帰りました。疲れて車のシートにぐったりでしたが、お参りに来ておいて(お札を買いに来ておいて)「疲れた、疲れた」と文句タラタラはいけないと思い、1~2回しか言いませんでした(笑)

たくさんの見どころがあるのに、この後、帰ることに。
実際に来てみて少し勝手がわかった気になったので、次回は体力配分等を上手くやって、違うエリアも回れるようにと思います。広い場所は1回目ではなかなか掴めませんね。広いテーマパークなんかも一緒だと思います。