第1134回「菜根譚」
11月23日 中村 覚
これまで、半ば冗談じみたことをたくさん書いてきましたが、今にして思えば、代表の筒井がよくOKを出してくれたことだと。それなりのものをここらで出しておかなければとも…。今回は王道。人生の真ん中を歩むような、菜根譚について書いてみたいと思います。
「菜根譚(さいこんたん)」とは今から約400年前の中国の洪自誠(こうじせい)という人物の著書です。内容は儒教や仏教などの思想を取り入れた処世訓です。知ったふうに書いていますが、もちろん本の表紙の折り込み部分に書いてある内容を、かいつまんでより簡単にしただけです。
※ ちなみに初めて菜根譚の字を見た時には野菜のレシピ本かと思いました。
数週間前です。この菜根譚の内容を収録した講演のCDが販売されているのを初めて見ました。たしか13巻ぐらいまでズラッと並べられていたと記憶しています。実は菜根譚の本は持っているものの数年前に一度パラパラッとやっただけで、ほとんど読まず そのままになっていました。時期尚早、今じゃない! みたいな(笑)
でも、今回見つけたCDだと用事をしている時や車に乗っている時に「~ながら」で聞けて手軽で良いなぁと。しかもこのCD、ユースド品で1枚100円。全部買っても1300円。こんなお得なことはめったにないはず。しかし、おかしなもので こういった時、変に慎重になります。待てよ、まずは試しに1枚だけ買って、自分と相性が合うようだったら残りを全部買おうと考えたのです。
ところが、13巻あるのに、1巻目だけないのです。多分、私と同じように考えた人が最初の1巻だけを実験的に買って帰ったのではないかと。気持ちはよくわかりますが、それは自分がやりたかった(笑)仕方ないので2巻目だけを買って帰ることに。
中を開けてびっくり。表紙には2巻目と書いてあるのに、中身は1巻目のCDだったんです。
どうやらお店がCDをまとめて買い取る際にしっかり確認しなかったため、中身の入れ違いに気が付かなかったようです。しかし、予想に反して嬉しかったのは私。せっかくなら1巻目から聞きたかったんですから(笑)
菜根譚は人生訓です。CDの中で語られているのは「貪らざるを以って宝となす」「余り有るに如かん」。この2つについて約1時間、ゆっくり丁寧に話が進行していきます。聞いていると身が締まる思い…というか、確かに、そうだ!自分もそうありたい!と。でも言うのは簡単です。聞いた内容をここに記して自分も本当にそう思う!ではただの便乗になってしまいます。
「貪らざるを以って宝となす」→無欲であることを自分の大切な宝と考える。
「余り有るに如かん」→人は余裕があることが大事~。みたいな事でした(笑)
こういった内容はよっぽど気の合う人とじゃないと、話すのはちょっと難しい気がします。ん~、せっかくCDの中身が違って意外性があったので、もう一つ何かあればコラムに書けるのに~という不純な思いから、しょうがない!数年間、日光に晒され背表紙の色もすっかり変わった本をこの際、読んでみることに。
原文の後に著者が現代語に訳して、それを更にかみ砕くように書いてくれているので、たいへんわかりやすいです。
●自己の本質にたちむかう
●迷わずとるべき道とは
●真の愛と幸せとは何か
~など、大きく6つの章に分かれています。更にそれぞれの章の中に
●人徳と希望
●聡明と知恵
●真心と誠実
~など、多数の項目に分かれていて、どこから読んでも自由。とても読みやすいです。たしかCDの中でも「菜根譚はそれぞれ項目に分かれているので気が向いた時、気の向いたページをどうぞ」みたいに言っていました。
どれもこれも、おっしゃる通り!首は縦に振るばかり。そしてこれらの膨大な人生訓をタッタカ、タッタカと読み進めていきます。(笑)
そんな中、あら? と途中で手が止まりました。「能ある鷹は爪をかくす」
あれ? 菜根譚にもある言葉なの? と言うか、菜根譚が元なの?と思い、検索してみましたが、特にそういうわけでもないようです。聞き慣れた言葉ですが、読んでみると、皆さん ご存じの内容とやはり同義です。自分の聡明さを外に出さず、才能は振り回すなと。真に能力がある者は物事をマスターすることの難しさを知っているので、自分の未熟さを反省する気持ちが先にたち、ひけらかしたりしない。
でも改めて考えると、能力や才能と言っても誰しもが「はい、これが私の〇〇に関する才能です」と自他ともに認めるものを提示できるわけではないと思います。能力、才能というと、簡単に言えば「生活していくうえで武器になるもの」というイメージが強いですが、もう少し裾野を広げて、例えば「人に対する気遣い」だって才能の内と捉えてもいいのではないかと。そう考えれば、多くの人に届く言葉になります。
もうずいぶん前に聞いた言葉ですが「相手に悟られないのが本当の気遣い」なんだよと。最近、これを実感しています。
ある友人はいつも「ついでだから~」と言って何かを届けてくれたり、車でちょっとそこまで連れて行ってくれたりと。でも、よくよく考えたら実は…。
身近にいる、能ある鷹でした(笑)