第1139回 「今年の仕事をふり返って」

12月28日

いよいよ暮れも押し迫ってきました。ありがたいことに、今年もとてもお仕事に恵まれました。印象的だった研修について、少しふり返ろうと思います。

ある病院で継続研修を行う中、受講なさる皆さんから「ハンデを背負った人に寄り添えるよう、自身がハンデを持つ体験ができる研修を」というお声をいただき、接遇研修では初めて、障害疑似体験を内容に組み込みました。

今まで大学の講義で簡単な障害疑似体験ワークをしていましたが、医療現場での研修にはどういったものがふさわしいのか?悩みながら内容を組んでみました。病気や障害の種類・程度や自立度合いなど人によってもまったく違いますが、日常に差し障りがある患者さんの気持ちを少しでも感じて欲しいと思いました。

脳と体の動きが一致しにくいワークをいくつかして「あれ?」「できない…」と笑いが出た後、高齢者の視野や聴覚を疑似体験すると「こんなに見えにくいなんて思わなかった」と声が上がります。その後 言語障害をお持ちの方の疑似体験もします。伝えにくい、聴き取りにくい中でコミュニケーションを取り合うことで、何が大切なのかが再確認できます。

ハンディを持つ方への対応は、体験してみて本当に正面に顔を近づけてもらった瞬間に「あ、私に話してくれる!!」と実感しました。

・車イス介助者の方に話しかけてしまいがちです。まず本人に話しかけるようにトライしてみようと思います。笑顔で!!

・認知症の方の目線を擬似体験してみて、今まで声をかけても無反応だった高齢者の方が近くに寄って視界に入る辺りで反応してくださる理由も分かりました。離れた所から声をかけてしまうことも多かったので、これからは広い待合でも相手の方の視界に入るようお声がけしようと思いました。

大変好評でしたので、その後介護職での接遇研修でも簡単なバージョンを取り入れてみました。
やはり、これまでになかった感想がたくさんありました。

・利用者さん目線でのあいさつや失語症の方とのコミュニケーションの模擬体験では、普段笑顔で挨拶を返してくださるご利用者がこのように感じていたのか?うまく話すことができないご利用者がこんなにもどかしい気持ちでいたのか?一発で伝わったときに出る笑顔はこういう気持ちだったのか、など知れたのは大変嬉しいです。

これぞ、やり甲斐のある研修です。現場の熱心な皆さまに教えて頂けて、感謝の思いで一杯です。

考えてみると私も医療ミスで長女が重度の障害を持ち、話はできるけど寝たきりの状態です。でも、38年間の子育て・介護体験を講師として研修に活かしていくことができます。多分、こういうことが私が障害児を育てた人生の意味の1つなのかもしれないと今では思えます。

さて、もう1つの今年 印象的だったお仕事について。「ボランティアガイド・マナー講座」。ちょっと珍しいでしょう?

NPO土佐観光ガイドボランティア協会さまからの、初めてマナー講座を開きたいとのご依頼でした。が、まったく現場がわからなかったため高知県観光コンベンション協会に取材に行ったり、観光客に紛れてガイドを受けたりして 少しずつ現場を学びました。おもてなしの服装にも格があります。青いブレザーが素敵ですね。

ボランティアガイドさんの平均年齢はなんと、70歳!しかも現場では長い階段を上がり下りしたり、様々な知識を観光客の方々にお話できる知力・体力を兼ね備えていなければいけません。その上にマナーが確認できれば怖いもの知らずです(笑)実際に立って話すロールプレイングもさすがで、よく声も出て場が和やか。しかも休憩時間にも多くの方が質問にいらっしゃって、とても熱心なことに感銘を受けました。

健康でご活躍できることも素晴らしいですし、高知の顔として誰かの役に立ちたいという利他の思いが根底にあるのが、まるで「人生はよろこばせごっこ」とおっしゃったやなせたかし先生のようです。私もこういう風に年を重ねたいと人生の先輩方に学ばせて頂きました。

来年はまた、どのような出会いがあるのか楽しみです。
それでは皆さまも、どうぞよいお年をお迎え下さいませ。