第1147回「どちらから いらっしゃいましたか」
2月21日 中村 覚
四国八十八か所のお寺に行った時のことです。道中、道端にはまだ雪が残り、これ以上ひどくなるなら、もう引き返した方がいいかなと。でも無事に駐車場に車を駐めることができ、思っていた程 雪の心配をする必要がありませんでした。
境内にも雪は積もっていましたが、雪かきをしてくれているセメント部分を歩けば、普通に参拝もできます。ただ日頃よりは歩ける幅がかなり制限されているので、行きと帰りの参拝客がすれ違う時には譲り合いが必要な場面も。
御堂へ向かう時、前から歩いて来る人が…。私がこの場で立ち止まっていれば、途中、すれ違わなくても済む。そんなシチュエーションです。よく見れば外国の男性です。これは立ち止まって待つ方が断然 良いだろうと。
国際問題に発展しかねませんから(笑)
待っている私の横を通り過ぎる時に、目が合いお互い会釈をしました。
でも相手の方の会釈は予想外でした。
日頃 外国の方と接する機会がないこともあり、外国人の会釈はカッコ良い!そんなことを思うものの言葉は交わしません。深山の寺では言葉は無粋(笑)
ウソです。人見知りなんです。相手の方もかなり人見知りだったかなぁ(笑)
数分後です。お参りを済ませ、納経所に寄った時のこと。ガラガラッと引き戸を開けて中に入ると、ストーブがあり外とは別世界。係の方と話している内に「最近は外国人の参拝も多い」とのこと。そういえばさっき会ったしなぁ。
「だいたいの外国の方は境内でゆっくりしていかれますよ」とも。自分もそうですが、日本人はお参りをしたらサッサと帰るらしいです。ゆとりのあるお参りをしている外国人の方が正式かも。何を持って正式というのかは知りませんが(笑)
「ありがとうございました」と納経所から出ようとした時、さっき会った外国の方が入ってきました。(まだ、居たんですね?)やっぱり、ゆっくりしているみたいです。向こうも、さっきのヤツだ!と、また目と目が合います。実はさっきも思ったのですが、きれいな澄んだ目をしている方なんです。
名前も知らない、年齢もわからない。こんな感じの方でした。
再度、会釈だけで終わらせるのは、それこそ無粋。
「どちらから いらっしゃったんですか?」
おもてなしの気持ち?で話しかけました。
澄んだ目をパッチリさせて「Where are you from?」
お前の言っている意味は、こういうことか?と英語に訳してくれました(笑)
「そう、そう」とうなずく私に「America」続けて「New York」。
おぉ! ニューヨーク人 と初めてしゃべったぁ! そんな気持ちは おくびにも出さず「八十八か所巡りは初めてですか?」と聞いてみました。
すると今度の日本語はちょっと難しかったらしく、若干眉をひそめ
「Just a moment」の仕草をしてリュックから取り出したスマホにゴチャゴチャッと話しかけ、そのスマホを私の前に出して、これにもう一度しゃべれと。スマホの翻訳機能です。それはわかりますが、この仕草が印籠を取り出す感じで「この紋所が目に入らぬかあぁ!」そっくりなんです(笑)
「八十八か所巡りは初めてですか?」 これが英語に変換された画面を見て、今度は向こうが英語で返答します。それが日本語になった画面を見せてもらうと、「日本のお寺は約200カ所まわっていますが、八十八か所は初めてです。」
「えぇぇっ! 何モン? ミーよりユー、スゴイ!」この後、ちょっと話は盛り上がり、本当にスマホ様々と思ったのでした。
他に何を話したかはほぼ忘れましたが、別れ際 澄んだ目の爽やかな笑顔で「また ね」と。
世界平和です。