第1152回「やなせさんとアンパンマン」

3月29日           中村 覚

作者はいなくなってもキャラクターは生き続ける。「アンパンマン」はその最たるものの1つではないでしょうか。

やなせたかしさんが亡くなったのは2013年10月、もうすぐ12年が経ちますが、テレビ放送や商品販売は今も続いています。人気を支えているのは、次々生まれてくる新しい世代。成長していく途中に必ずアンパンマンがいるのではないでしょうか。もちろん時間が経てば、違うヒーロー、ヒロインに移行します。移ろいやすいのが子供(笑)。でも、このサイクルがある限り人気は不動、おとろえ知らず。

世に出回っているアンパンマンの多種多様な商品群。お菓子に始まり服、玩具、遊具などおよそ子供たちの生活に関わる物なら、なんだってあるのではないかと思える程、商魂たくま~、いえ、アンパンマンはスゴいのです(笑)

そんな数多ある商品から、「これ、意外にすごいんです」そう紹介したくなるのがこちら。もう20年以上続くシリーズの「あつまれ アンパンマン」、食品玩具で指人形の大きさです。

中に何が入っているのか確認ができて、値段もおよそ200円と親切です。
今年の3月に最新のパート83が発売されました。

今回、ご紹介するにあたりラインナップの中でも王道のアンパンマンを買いに3軒のスーパーに行ったのですが、どこもアンパンマンとバイキンマンだけ売り切れでした。これほどまでに子供達に人気があるのか!(驚)。すぐ飽きちゃうくせに(笑)

毎回ラインナップには子供達が喜ぶアンパンマンやバイキンマンなどがコスチュームを変えて登場する一方、「あなたは、誰?」というキャラクターが入っているのが、この商品の魅力ではないかと。しかもずっと集めていたら、ズラッと並べた時にはアンパンマン立体図鑑の出来上がりです!

今回のブームに乗るように、やなせさんの「明日をひらく言葉」(2012年発刊)を読み返しています。

「あんぱん」放送開始にあたり制作されたノボリにも表記されている
「喜ばせごっこ」。このことが書かれているページを改めて読むと

「人間が一番うれしいことはなんだろう? (中略)
ひとはひとをよろこばせることが一番うれしい。」

とあります。「ひとはひとをよろこばせることが一番うれしい。」この文では「一番」という文字以外、全てひらがなというのが、「人を喜ばせるのはそんなに難しいことじゃないよ」やなせさんのそういった気持ちが見え隠れするような。

私はこの「ごっこ」という表現に、良い意味での距離感を感じます。
「ごっこ」でいいんだよ。「ごっこ」なら軽妙な感じで末永くできるからね。本気にならなくてもいいよ、と(笑)。

やなせさんには戦争体験や(前線で敵と交戦したわけではないですが、後方支援での重労働や飢えの体験)、69歳でアンパンマンが脚光を浴びるまでの漫画家としての長い下積み?生活があります。こういった中で、ごく自然と人の影の部分もたくさんご経験なさったことと思います。

それでも光の方向を向くことは、やなせさんの生き様だったとも思います。

だからこそ、見返りなんか求めずに、自分にできることをやっていこうと。
それをエンターテインメント的に言えば「よろこばせごっこ」。

ともあれ、色々と考えるきっかけをくれた やなせさんの「明日をひらく言葉」。月曜日から始まる「あんぱん」も楽しみです。