第716回 「言い間違い、聞き間違い」
10月1日 (中村 覚)
寝入りばなはよくても夜中にパッと何度も目が覚めてはその都度 また眠る。最近はこういった事のくり返しです。ある晩のこと、不規則にまた目が覚め、この時に限りなかなか眠れず、「寝なくては、寝なくては~」と思っている矢先、「うさぎ と うなぎ」と頭に浮かびました。何 これ? と自分でも思いましたが、語呂合わせみたいなのが ちょっと面白く、これは忘れない内に起きてメモしなくては。書き取った字面を見ながら「うさぎ」と「うなぎ」は一字違いだったのかと再確認。ますます眠れなくなった夜でしたが「うさぎ と うなぎ」の収穫は嬉しかったです。
後日、友人にこの話をすると、クスッと笑ってもらえたので またまた嬉しくなりました。その翌日、今度はこの友人からネットの画像を紹介してもらいました。それはニュース番組の一場面で、アナウンサーの後ろには大きなうさぎの写真があり、うさぎ関連のニュースだと一目瞭然。しかし写真に付けられていたキャプションは「ウナギ」となっており、凡ミスによる おもしろ画像でした。人のすることに間違いは付きもの! 自然と笑えました。
ところで、一週間程前の新聞に“ 「ら抜き」初の多数派に”の見出しで、言葉遣いに対する世論調査の結果が出ていました。「見られる」「出られる」という本来の使い方とは異なる「見れる」「出れる」という「ら抜き」で表現する人が多数派になったとのことでした。 間違いが間違いでなくなる過渡期かなと。
日頃、誰かと話している時に、ら抜き言葉であってもなくても、言葉の意味は通じます。文法的に間違っていても、使えるか、使えないかでいうと、使える! 世の中、短縮化傾向にあり 言葉も生き物、変化して当たり前というところでしょうか。
そして同記事で、慣用句を間違った意味で使っている多数派についても触れていました。例えば 「寝覚めが悪い」= 眠りから覚めたときに気分が悪いことの意味。これを「目覚めが悪い」と使っている人の方が多いそうです。正しく使っている人=37.1% 間違って使っている人=57.9% 知らない間に私もこの多数派に属していました。
そもそも、わざわざ間違ったことを言いたい人はいません。間違って覚えてしまったことが原因かと。じゃ なぜ 間違って覚えたかというと、言葉のほとんどは音として捉えているので、聞き間違いが起きやすいのではないでしょうか。
この「寝覚めが悪い」も会話の中で サラリと聞き流せば「目覚めが悪い」と聞こえなくもありません。
そう言えば、土佐の高知には皿鉢料理という郷土料理があります。皿鉢(さわち)と読みますが、有田、もしくは九谷等の大皿に 刺身やタタキ、寿司、煮物や焼き物などを盛り込んだものです。子供の頃、いく度となく周りの大人が言っているのを聞いて「さあち」だと思い込んでいました。活字で初めて確認した時も「さわち」とは読めないぞと。
ちなみに、「高知県方言辞典」には「さーち」と表記されています。こうなると逆に、なぜ「さあち」ではなく「さーち」と長音で表記されているのか?謎が謎を呼びますが、どなたかご存じないでしょうか。