第669回 「土佐弁シリーズ③」
10月29日 中村 覚
「こんまいことを ちまちま 言よったち、いかんき~」
→「小さなことを細々 言っていても だめだから~」という意味です。
「物事は俯瞰して見よ!」 みたいな言葉がこの後に続くわけです。
ということで 今回は、初っ端、大きく出たいと思います。
まずは、土佐にゆかりのある歴史的名曲をどうぞっ!
「春 高楼(こうろう)の花の宴 巡る杯 影さして~♪」
あれ? またお酒の話? いえいえ。 と言うか、これ「荒城の月」でしょ? そうです、荒城の月です。 荒城の月と言えば、作曲は瀧廉太郎・・・ 瀧さん、高知県出身だったっけ? 違います。じゃあ 作詞の土井晩翠? 違います。実は土井晩翠の奥さんが高知県出身なんです。 晩翠さん、土佐のお嫁さんをもらったから、あんなすばらしい歌詞をお書きになられたのでしょう。(笑)
奥さんの名前は土井八枝さん。 この方「土佐の方言」という本をお書きになっています。 この本です。
実はそれを知ったのはつい最近です、おどろきました。 歴史的役割の大きな方ではないでしょうか。
土佐弁の「オドロク」について。
私のさきほどの「おどろきました。」というのは標準語の「びっくりした」の意味です。ところが 祖母の使う「オドロク」は違っていました。
「今朝は早うから おどろいた。」というわけです。明け方にショッキングな夢でも見たのか? もしくは朝早くから家族にびっくりさせられたのか? 実はこれ 「今朝は早くから目が覚めた」の意味です。
【オドロク】 目が覚める。
同じ土佐人でも世代の違う 私にすれば「なんじゃ そりゃ? まぎらわしい」ってなものです。まぁ 今 考えると「毎朝、毎朝、なにか新発見を楽しみに驚きをもって目覚めたい」みたいな感じっていいですよねぇ~。そんな意味ありませんけど(笑)。
次は取り扱い注意の土佐弁。 県外の方には なかなか わかってもらえない方言です。
まずは「 カク 」 例 → (机を)カク。
「机さん、机さん、かゆいのはここですか?」 ポリポリ。
「いやー中村君、助かったよ。」 「いえいえ また いつでも どうぞ。」
・・・ これは 無理。
【カク 】(重い物を) 持ち上げたり、運ぶ。
「このタンス、一緒にカイテ」。こう使います。
次は 「ノーガワリー」
例えば、友人が ぶかぶかの靴を履いているのを見て「ノーガワリーろ」と言います。 高知県人同士なら問題ないですが、県外の方なら「(そんな大きめの靴を履いて、お前は) 頭が悪いのか」 と言われたと思い、気分を害するかもしれません。
【ノーガワリー】 具合が悪い。
「 ノー 」は性能の能です。脳ではありませんので、以後 お見知りおきを。
そして、「ノーガワリー」は、語気を強めて言う場合もあります。例えば 「いよいよ(本当に) この車、ノーガワリーッ!」 エンジンがかかりにくいなどの理由から、具合が悪い、役に立たないと、舌打ちの一つも交えてののしる時です。(ちょっと言い過ぎか?)斬って捨てる時ですね。
土佐人は自分の思い通りにならない物(特に所有物)に対しては、容赦なく斬りつけます。思い通りにならない物は大嫌いです。(笑)
「いよいよ この車、ザット シチュウ!」 これは平成版「天誅」の意味です。 バッサリ やります。
【ザットシチュウ】 雑な、いい加減な
・・・天誅はウソです。(笑)
では、最後に。 数年前に、知り合いから聞いた話で、いまだに忘れることができない「やっぱり土佐の方言は伝わらない」話です。
全国の色んな企業が集まった会議で、収支報告を聞かれた時のことです。 「うちは 今年は、トン トンでした。」 すると同席している皆さんは「?」。
妙な空気を感じたので、あわてて「ボッチリということです。」 と言い直したのですが、やっぱり「?」。 悩んだ末、「今年は プラス マイナス ゼロでした。」 すると、一同 「おぉ なるほどぉ」 やっと納得してくれたそうです。
この方は、高知に帰ってきて、 「いよいよ、県外に行ったら、土佐弁は英語より通じざった。」 → 「本当に、県外に行ったら土佐弁は英語より通じなかった。」と同僚にこぼしたそうです。
【トン トン】、 【ボッチリ】 丁度の意味。
では今回はこの辺で締めるのがボッチリかと。(笑)