第839回 「交流分析の信条」
2月23日
先日、NPO日本交流分析協会の機関誌「JTAA」の「現場を訪ねて」のコーナーのインタビューを受けました。交流分析(TA)はコミュニケーションの心理学とも言われ、様々な現場で活用されています。
私は実践心理学とも言われるNLP、人生をより充実させるポジティブ心理学、言葉と行動分析のLABプロファイルなどいろいろと学んでいますが、一番活用しているのが交流分析です。学んでみるとどれも心理学という同じ山に登っている、ただ登り口が違うだけだと実感します。最初に交流分析で「心のしくみ」と「心のはたらき」を学んだこともあって、私にとってはベースの心理学です。
私が交流分析を学ぶきっかけになったのは、2005年、NPO日本話しことば協会の大阪での研修会でした。たまたま現在の日本交流分析協会理事長 下平久美子先生の講座を大阪で受講し 日常で活かせる奥の深い心理学であることと、下平先生のずば抜けた講師力の高さに感銘を受けたものです。
その後下平先生に2級、1級と学ばせて頂いた後、地元でずっと交流分析の講座をなさっていた山崎真理先生から、高知初のインストラクター養成講座にお誘いいただき、ぜひ自分の研修に取り入れたいとインストラクターになりました。
交流分析は とてもわかりやすい心理学で、しかも日常で大いに役立ちます。
中でも「交流分析の信条」は、ぜひご紹介したいものです。
「過去と他人は変えられない。
変えることができるのは、“今、ここ”にいる自分と未来だけ。」
私自身この言葉に、何度も救われました。とても辛い出来事に出合った時、以前は泣いたり落ち込んだりして、そこから立ち直るのに長いことかかっていました。でも今は、交流分析の信条を活用し、心の健康を保つのにずいぶん役立っています。
たとえば、先月、母が自転車同士の事故に遭い、その後の対応に忙殺された時。
「母の事故」というのは「過去」の「他人」のことですから、「なんでこんなことになったんだろう」といくら言っても解決にはなりませんよね。
「では、私はどうすればいいだろう?」と具体的行動に落とし込むことが、自分と未来を変えられる鍵です。湧き上がる不安に対しては、一つずつ目の前の問題を解決していくことで安堵を重ね、乗り越えられました。
今ではこうしてコントロールできるようになりましたが、30数年前、生まれた長女が医療ミスによって寝たきりの身体障害を持ってしまったとわかった時には、ずいぶん涙を流し、何年も落ち込んだものです。もしもあの頃に交流分析の信条を知っていれば、どんなに救われたことだろうと思います。
その後長女が24才の時、東日本大震災が起こりました。物理的には被災しませんでしたが、彼女は震災のテレビ映像の影響で突然精神障害を発症。当時はそういう方が少なくなく、社会問題にもなりました。それまで人とのコミュニケーションが大好きで、コラムまで書いていた彼女が食事も睡眠も拒否し泣き叫び、コミュニケーションは断絶。私も絶望して泣き暮らしました。
半月ほどたった頃、ふとTAの信条を思い出したのです。「過去と他人は変えられない。変えることができるのは、“今、ここ”にいる自分と未来だけ。」
(そうか、私は彼女を変えようとしていた)と気づき、「泣いているだけでは何も変わらない。あるがままのこの子を受け入れなければいけない」と気づき、本当に救われました。
こうした体験を医療教育の場で学生の皆さんにお伝えすると「勇気をもらいました」「私もこの言葉で変われそうです」「人生で忘れられない授業になりました」と嬉しい感想を沢山頂きます。障害受容やレジリエンス(回復力)の事例としてお伝えすることが、今では自分の使命と思えます。
自分らしく幸福に生きるにはどうしたらいいのかを考えたとき、アンソニー・ロビンズの言う「コミュニケーションの質が人生の質を左右する」、まさにそのために交流分析があると思います。自分の長所をどう活かし、自律的な人生を過ごしていくのか。論理的でわかりやすく活用しやすい交流分析をこれからも深めつつ、多くの方々にお伝えしていこうと思います。