第841回 「現代の吟遊詩人、リピート山中さん」
3月10日
リピート山中さんを初めて知ったのは、つい先月のことでした。Face bookで報道に関して硬派の発言をなさっているのを拝見して「信念の方」だと感じ、やりとりさせて頂いて友達になりました。リピート山中さんはシンガーソングライターで「ヨーデル食べ放題」なんて楽しい歌は、私でも知っています。厳しくて楽しくて、限りなく優しい方でもあります。
たまたま3月初めに、高知県に一週間ほどいらっしゃるとのこと。あちこちでライブを開かれているのですが、残念ながら自分のスケジュールとなかなか合いませんでした。でもリピート山中さんという方をもっと知りたかったので、一般向けではなかったのですが、高知城東病院の認知症デイサービスでのライブに、病院にお願いしてお邪魔させて頂くことにしました。
何十分も前から、会場でお客さまを待つ姿。2~3人入ってこられたら、自然に「うさぎ追いしかの山~♪」と「ふるさと」が始まりました。正統派フォークシンガーを思わせる豊かな声量と声の美しさに、(失礼ですが)驚きました。
会場に多くの利用者さん、スタッフさんが三々五々と集まり、なごやかに進みます。
「リピート山中のリピートっていうのは、1回会った人とくり返し会いたいっていう意味なんですよ~」には、なるほど!と納得。(笑)
「母が88なので、皆さんと同じくらいの年代でしょうかね」と語りかけつつ、「おぼろ月夜」「ミカンの花咲く頃」などが続きます。歌詞を教えつつ歌われるのでみなさんも一緒に歌うことができましたし、言葉が明瞭なので、とても聞き取りやすく感じました。その後「リンゴの唄」「青い山脈」「ここに幸あり」など、認知症の高齢の皆さんも昔の歌を楽しんでいました。最後には踊り出す方まで。(笑)
リピート山中さんは、医師と往診コンサートにもいらっしゃるそうです。寝たきりの方の枕元まで歌を届けるとか。過疎の村で往診に行くドクターの応援歌、「往診ハラショウ」を歌ってくださいました。ハラショウというのは素晴らしい、の意味です。
♪往診ハラショウ!今日も行く 菜の花色の風の中・・・
♪診ましょ 診ましょ どんな病も たった一人の総合病院
私の夫もかつて、地域医療で過疎の村を回って往診していたのを思い出しました。
末期ガンのおじいさんがサブちゃん(北島三郎)の歌が好きで、枕元で「祭り」を歌ったら寝たまま手拍子で踊りだし、ご家族も喜んだとか。「おじいちゃん、また来ますから」と約束して医師に聞くと余命は半月。「嘘になってはいけない」と、神戸の自宅から山口まで後日行こうとしたらその日の朝、医師から「血圧が低下して意識がなくなった」と聞いたそうです。
普通なら、それで話は終わるでしょう。私だって行くのをやめると思います。
でも、リピート山中さんはそれでも行き、意識がないおじいさんの横で歌ったそうです。すると驚いたことに、おじいさんの目が開き、そして踊りだしたそうです。ご家族はどんなに嬉しかったことでしょうか。聴いていて、泣けました。
「歌には見えない力がある」。その通りだと思います。
沢山の高齢者の方にすべて握手なさり、最後のお一人まで見送られる姿に、本当に人を大切になさる方だなと思いました。
週末にはラ・ヴィータホールで、桂雀三郎とまんぷくブラザーズの一員として、安倍夜郎さんとトークショーやライブをなさり、それも見に行きました。
大阪の「やぐら」という深夜12時から営業する串カツ屋さんを歌った「やぐら行進曲」を作詞作曲し、これが四万十市出身の漫画家 安倍夜郎さんの「深夜食堂」のモデルになったそうなんです。「ヨーデル食べ放題」「やぐら行進曲」、“♪人生さまざますべて良し”のフレーズが心地良い「それぞれの味 札幌黒ラベルの歌」などで会場もノリノリ。アンコールの「江戸の人気者」も大受けでした。
会場でCDを2枚買ってきました。「家族のうた」と「いのちのうた」です。
特に「いのちのうた」はメディカルソング大全集、と銘打っていて
往診ハラショウ/ロコモかしこもサビないで(ロコモティブシンドローム予防体操解説写真付き)/頑張れ!スイゾウちゃん/脱!メタボリックロックンロール・・・
など、病院やリハビリの現場で披露されています。今回も高知大学医学部付属病院で音楽を用いた楽しい運動指導としてロコモ体操の運動指導をなさったそうです。これ、行きたかったなあ~。仕事で行けなかったけど。
この他、北アルプスの山々に登っての山小屋コンサートで、登山家「加藤文太郎の歌」を歌ったり、音曲漫才師としての顔もお持ちです。
さまざまなテーマで歌を作られ、唄うメッセンジャーとして全国を唄い歩かれているリピート山中さん。まさに、現代の吟遊詩人です。