第915回 「漢字のちょっとした疑問」
8月8日
あれ? なんでこんなふうに書くのかと疑問に思う漢字があると、忘れない内になるべくメモすることにしています。 今回はそのメモの中から、自分だけではなく、他の人にも「たしかにちょっと疑問かな?」と思ってもらえそうな字を紹介してみます。(笑)
「翼」。
ご存知 「つばさ」です。翼と聞けば大空が連想され広大なスケール感のある字ではないでしょうか。鳥類なら誰もが持つものですが、特にワシやタカといった大型のカッコ良い鳥に一層似合うような気がします。
ところで、「羽」+「異」=「翼」です。 えっ、 羽とは異なる? イメージとしては 羽の集合体が翼じゃないの?(あくまでイメージですが)。「木」を3つ書いて「森」。「車」を3つ書いて「轟く」(とどろく)。こういった合わせ技のような字の構成でもいいように思うのですが。羽に異なると書いて「翼」です。
辞書で調べると「羽」の字には、つばさの意味もあり、「異」の字には「もう一つ別の。」という意味があることがわかりました。「一つのほかにもう一つ別のつばさ」。つまり一対のつばさの意味です。ですから「羽」+「異」=「翼」だということです。
「翼をください」や「翼があれば」など歌の世界に出てくる翼には希望やロマンを感じますが、調べた結果 字の構成はとっても常識的なものでした。(笑)
次は「退屈」です。
たいくつと言えば「暇ですることがない。 つまらない。」といった意味合いですが、字面は「退いて屈する」です。どこにも 暇でやることもなく つまらない の意味は見当たりません。それを考えると もしかすると 昔 負け戦の時にでも使っていた言葉なのかな? と思いました。
そうは思ったものの そのままにして数日後です。友人と会った時に、この「退屈」に関する疑問を話したところ、ちょっと興味を持ってくれたらしく 頼みもしないのにその場でスマホで調べてくれました。(笑)
もともとは仏教用語と判明。修行の辛さに屈して精進することをやめてしまうことを意味していたそうです。ですから 退き屈すると書くわけです。へぇ~っとびっくり! よくぞ この場で調べてくれました!自分まかせにしていると、いつまた調べることになるやら。(笑)
~で、コラムに書くにあたりちゃんと自分でも調べなければと、後日 パソコンで検索です。でも もう答えを知っているだけに ちょっとゆとり?が出てしまい「退屈」と打ち込み、まずは画像検索してみました。すると出るわ 出るわ、脱力感いっぱいに昼寝や何やらの猫や犬の写真がわんさと。みんな修行をやめたもの達です。(笑)
いや、まじめな話、ちゃんと検索すると仏教用語であるということを色々な方が書いてくれていました。別な言い方をすれば 答えに溢れていました。
何かをネットで調べれば、すぐに答えが出ます。どこかの誰かが調べてくれたことに便乗です。もちろん いつもその答えが正しいとは限りませんが、今回のように生活に直接関係のない漢字であれば、仮に答えが 多少 間違っていても問題ないわけです。(専門でやっている方は別ですが。)
これを考えると 既存のことに対する答えは、今の時代 みんなが知っているに等しいと思います。ネットにつなぎさえすれば瞬時に「それって、○○の理由からだってさ」「えぇ、そうだったんだぁ~」 これで、おしまい!
調べてすぐに出てくるような答えには もうそれほど価値はなく、なぜ?と思う気持ち、疑問に思う心、問題を提起することの方に価値があるのかなとさえ思えてきます。 誰かが疑問に思わないと せっかくの“答え”も出る幕がありません。思考も会話もクイズ番組も“答え”からは始まらない気がします。