第917回 「頑張れ あじさい園」
8月22日 中村 覚
新型コロナによる感染者への誹謗中傷が問題となっている昨今、地元の高知では心温まる対応が全国ネットのニュースでも取り上げられました。クラスターが発生した高知市にある知的障害者支援施設「あじさい園」に「頑張れ あじさい園」と書かれたのぼり旗が、心ある方によって立てられたのです。
「地元ということもあり、この旗をぜひコラムでも紹介させてもらえないかな?」と代表の筒井から話があり、言われるとその通りと思い「はい!」と返事をしました。でも「ただ写真を撮らせてもらうのは傍観者みたいだからね」ということで筒井から寸志を渡され、それを持って私が園に伺うことになりました。
もちろん ただの興味本位ではありません。皆さんの温かい気持ちが広がるきっかけに少しでもなれば。だからこそコラムで紹介させてもらいたい、その一心です。
ありがたいことに、本館の脇にある建物の近くで携帯電話をしている男性をお見かけしました。ちょうどその時、タイミングよくお電話が終わったようで、しかも目が合ったので「おはようございます。」とあいさつをすると、こっちに歩いて来てくださるので、良かったと思いました。
ところが少し緊張してしまって「あのぉ、大変な時期と思います。これを役立ててもらいたいですが~。」と寸志をおずおずと差し出しました。
すると1~2秒、何も言わず こちらをじっと見る男性。その後、とても心のこもったお礼の言葉をおっしゃったので、私も照れ臭くなりました。 そのあと自己紹介をしてくださり、理事長の南さんとわかりました。こちらの説明もしなければと思い「僕は社員で、代表と話をして~」とこちらに伺うまでの経緯をお話ししました。
そして、今回のコロナの話題になり「ありがたいことに、園にかかってくる電話もほとんど応援です」というようなことを話してくださいました。
その後、のぼり旗の写真を撮らせてもらうことに。すると南さんが旗の説明をしてくださいました。
旗は門の両脇に1本ずつ設置されています。
建物を正面にして左側に立っている旗は、園に入ってくる方が読める向きに。
右側の旗は、帰られる方が読める向きに設置されているとのことでした。
ご説明頂かなければ、知らずにただ撮っていたと思います。
風で旗がよくなびいており、それを見ると気持ちがグッと引き上げられ、高知の風土も後押ししてくれている印象を受けました。
写真を撮りおえて、再び南さんの所へ。
今月の18日 午前6時過ぎに出勤してきた職員の方が、設置された旗を目にしたそうです。そして次の日、玄関に同じ旗を立てようとしていた60歳前後の男性を職員の方が発見。連絡先などをお聞きしたそうですが、「かまん、かまん」とそのまま立ち去ったということです。
「それでは失礼致します」と挨拶して車に乗り込むと、最後まで見送ってくださいました。たいへんな時期に急に伺ったにも関わらず、丁寧に接して下さった南理事長のお気持ちが嬉しくて、車内で1人温かい気持ちになり、代表の筒井に早速電話しました。
小石を湖にチャポンと投げ入れると水面に波紋ができます。どんな小石でも水面に現われる波紋は弧を描くように徐々に大きく広がっていくものです。波紋のように人の優しい気持ち、温かな心もゆっくりと広がっていってほしいと思います。