第940回 「未完成」
2月6日 中村 覚
「未完成」という言葉を聞いて、何が頭に浮かびますか?途中、中途半端、まだまだ。まぁ このようにほとんどが悪口かと…。(笑)
ところが、自分自身の中の「未完成」に焦点をあてた場合、人間は勝手なもので少々事情が違ってきます。急に愛しくなり「未完成」とは、まだまだ可能性を秘めた部分であり、伸びしろである。つまり成長の余地あり!自分の中にこんなフロンティアがまだあったのか!(笑) こういった思いを胸に気持ちを新たにまた日々の生活に取り組んでいく。未完成とは、やる気のみなもとだったりすると思います。
先日、小物を置くための小さな棚をネット検索していた時のことです。木製で重厚感があり、奥行きはそれほどなくて~と理想ばかり言っていると、あれよあれよと金額も上がっていきました。
それならと オークションで手頃な物がないかと探してみることに。運よく自分が探している小ぶりの棚が安く出品されていました。紹介文には「自作で 未完成ですので~」と書いてあります。 要するに素人が作った物なので完成度は高くありません、でも 用途としてはそこそこです、と。(笑)だから安いんですね。
これを読んだ時に、「なにもこの棚に限らず、自分で作る物はほとんどが実は未完成」だなと思いました。自分で何かを作る、考える、しゃべる等はすべて「自作」で、よほど結果に満足できない限り「未完成」なのは自然なこと。しかも、後から目線で見た場合、まだまだだったと気づくことがあります。
いやいや、そんなことはないよ! 仕事でもなんでも規模の大小を問わず 目標を掲げてやり遂げた時の、完成したあの満足感、充実感は素晴らしい!
もちろんそうなんですが、 一つの目標が終われば また次の目標へという流れを考えると、「これでおしまい!」ということはなく、ずっと未完成なのが人生かなと。(笑)
学業、仕事、家庭、趣味、等々がなかなか思うようにいかない時でも、生きていくことは「自作で未完成」なのだから当たり前。そんなふうに思えたら現状をまた違った角度で見ることができるのではないでしょうか。
余談ですが、世界的に有名なイタリアの美術家、レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた「モナ・リザ」。一説によるとこの油彩画は未完成とのことです。「あのモナ・リザも未完成らしい…。」そう考えることで誰しもが良い意味で、少し肩の力を抜くことができればいいのではないかと思います。