第953回 「追手前高校 伝説の地下池②」

5月6日

いよいよ 追手前高校、伝説の地下世界へ!

ゆっくりと、脚立を下りていくと…

地下世界に着きました!
「大丈夫ですか?」「大丈夫です!」
まるでお風呂場のように、広い空間に声が響きます。

目の前に、日常とはまったく違う世界が広がっています。
文献にも残っていない、初の地下池の写真公開です!
柱などの構造物がすごい。天井までの高さは、2m弱でしょうか…。
こうやって建物を支えているのがよくわかります。
ライトの光が届かない部分は、漆黒の闇。
シンとした静寂が広がっています。

長方形に区切られたコンクリートの区画は足下に水が溜まり、浅いプールのようです。
レーザー距離計で計ると、およそタテ7m×ヨコ4mほど。
どうやら地下構造は、沢山の長方形の区画で構成されているようです。

水は動いていないせいか透明で、底に沈んだものが見えます。
左手にあるのは、以前穴のフタとして使われていた木です。
建築時からとすれば、90年もの。
元職員のSさんが20年以上前に乗ったら、腐っていて地下に落ちたのだそうです。
もはや、遺構と言えるでしょう。(笑)

闇の中を、ゆっくりと前進します。

水は透明に見えますが下に泥が溜まっていて、
歩くともくもくと雲のように湧き上がります。
元々は地下水が上がってきているきれいな水だったと思うのですが、
台風などで浸水したとき流れ込んだ濁水に混じった汚泥が積もったと推測されます。

5mほど歩いて、後ろをふり返ったところです。
脚立のある付近は水深が浅いのですが、深い部分は膝とかかとの中心くらいまであり、私以外の方は長靴じゃなかったので 脚立から進めませんでした。

真正面には、先が闇に溶けたトンネルが見えます。
ここは校舎の一番端なので、この真上には長い廊下が続いているのです。
100mほどあるので、このトンネルもそれくらい続いているのでしょう。

この区画は水深が深いところで22cmほどでしたが、Sさんによると中央へ近づくと水深が深くなるとか。納得です。ここは水の流入孔がありませんが、中央にはあるので、雨水も溜まるのでしょう。壁や柱には、白い浸水の跡が1m以上の高い所まで線として残っていました。

この柱をご覧下さい。
まるで大木のように根を広げ枝を伸ばして支えているようで、かなり頑丈に見えます。建てられた昭和6年、90年前には最先端の技術だったことでしょう。そのため、昭和の南海地震にも持ちこたえられたのだと思います。

追手前高校は軟弱地盤の上に立っているため、その下の固い岩盤層まで25mほどの
鉄筋コンクリートの柱を通して、安定させているとか。
残念ながら、地下水に浮かんでいて安定しているわけではありません。(笑)

O先生が懐中電灯を向けてくださると、トンネルの先がおぼろげに浮かんできました。長い長いトンネルです。まるで宇宙船の中を思わせるような構図に 魅了されました。

今回、漆黒の闇に備えて、ライトを4種類準備していましたが、残念ながらランタン2つは光が弱くて役に立たず。平面状の充電式ライトは、辺りを照らすのに役立ちましたが、トンネルの奥などは懐中電灯など指向性のライトでないと、光が届かないとよくわかりました。準備不足です。

実はこの日に備えてカメラのフラッシュを買ったのに、いざ使おうとしたらなぜか光らず、大いに焦りました。でも逆に、それで地下の雰囲気をより伝えられたようにも思います。(笑)

脚立の右手の壁は、隙間が狭くなっていました。
ふと見ると、なんと虫が!数匹、驚いたようにサーッと逃げます。

ふと、高校生の時の記憶が蘇ります。
「小松先生、闇の中でも生き物はいました!
残念ながらゴキブリでしたが。」
こんなところでエサがあるんでしょうか、不思議です。
さすがは2億年を生き残っているサバイバーです。(笑)

コンクリートの梁を計測すると、幅は40cm、高さが20cmでした。
よく見ると中の鉄骨のサビが見える箇所が。

レーザー距離計で区画の幅や長さを計測できたのは良かったのですが、興奮して温度計、水温計などを地下に持ち込むのをすっかり忘れていました。
4月末で1階の廊下の気温が19度だったとき、地下入り口の気温は17度。
地下はおそらく16度くらいだったのではと思います。

天井に水滴がびっしりと付き 水がしたたり落ちていましたが、密閉空間だからでしょう。ムッとした感じはなかったので、多分湿度は70~80%くらいだったのでは。

結局 地下には、30分ほどいました。
私が歩いたことで、最初の写真と比べると水が濁ってしまいましたが、また時間をおくと透明に戻ることでしょう。

水位は季節や降水量によって変わるでしょうが、壁を乗り越えつつ腰くらいまでありそうな水の中を歩いて校舎中央部まで行くのは、かなり困難と思われます。水位が1mとかになったら境の壁が水没するので、ゴムボートを使うと行けるかもしれません。そうなると区切られた「池」が一つとなって、伝説の「地下湖」となるのでしょう。

それにしても長年の追手前の謎が解明でき、貴重な心弾む経験でした。
O先生、Sさん、そしてお読みくださった皆様、本当にありがとうございました。