第962回 「コンビニエンスストアにて」
7月9日 中村 覚
毎回、入った後で「しまった!」と思うのですが、出てしばらくたつと忘れて、その内またうっかり入ってしまいます。昼時にお客さんでごった返すコンビニエンスストアの話です。
駐車場の車の数に反し、店内にはたくさんのお客さんがいます。私のような通りすがりはわずかで、ほとんどが近所でお住まいだったり職場が近かったりと地の利を活かした人達だと思います。多くの人が徒歩のため駐車場だけ見ると空きがあったりするので、つい停めて店に入って「うわっ!」と思うのです。
混んでいる店が嫌ならすぐ出ればいいのですが、でもそこはやっぱりせっかく入ったわけですので。(笑)混雑時のレジの長い待ち時間が気になるわけではありません。松葉杖なので、店内に人が多いと日頃と違いスムーズに動くことができないのがちょっとだけ不便です。杖をつくと大人が3人肩を並べて歩くぐらいのスペースを取ってしまうので、こういう時は肩をすくめて杖の幅を縮めて歩きます。こうするとある程度は他のお客さんに邪魔にならないようにできているかなぁと。でも、日頃と違う杖のつき方なので身体のバランスが不安定になったりもします。
~と、混雑時の店内を勝手な自分目線で言うと、もうちょっと色々あるのですが、でも好きで入っているわけですから。(笑)
ある日、またうっかり入ってしまい、人の数に呑まれます。が、「まっ、(淹れたての)コーヒーを1杯買うだけだから」と腹をくくります。1杯のコーヒーを買って出るまでに5~6分かかりました。「ふぅ」と息をつく感じで、店を出て車に乗り込もうとした時です。
「どなたか、お待ちですか?」と後ろから声がします。振り向くと車椅子の年配の女性に対して、今店を出てきたばかりの女性が声をかけています。そう聞けば~、店の外にいるこの車椅子の女性、たしかに私が店に入る時から今と同じ場所にいたような。 私がコーヒーを買って店を出てくるまでに5~6分はかかっていますので、少なくてもその時間ずっと同じ場所にいたことになります。もしかしたら もっと前からいたのかもしれません。
車椅子の女性は、「実は店の人が淹れてくれるコーヒーを買いに来たけれど、中にたくさん人がいるので、もっと空いてから入ろうと待ってるんです」と話していました。混雑時の店内では、松葉杖でも日頃とは動きが違ってきます。車椅子だと杖以上に難しくなるのは当然です。
女性は続けて「もうちょっと待てば、空く。(いつものことだから…)」そんな調子で話し続けていました。
私はそこで車を出したので成り行きを見かけるだけになってしまいましたが、こういった方もいらっしゃるんだなと。
今度は夜のコンビニ。お客さん、空き空きです。男性とレジ付近で、突然バッタリかち合いました。瞬間、こちらも身を引きますが、むこうも避けてくれます。(おおぅっと、松葉杖の人、いたのかぁ。)いつもはこんな感じで終わるのですが、この時は違いました。50代ぐらいの顔を赤くしたほろ酔い加減?のこの男性、私を見てビックリした様子で、大声で
「大丈夫かえぇっ!」 目ェ、クルクルにして「大丈夫かえぇっ!」
「あぁ 大丈夫です…。」
(杖を見て、ケガだと思ってくれたのかなぁ。でもケガじゃないしなぁ。)
ちょっと考え込んだ様子でしたが、そのまま出口に向かってくれました。内心、
(あぁ良かったぁ。心配してくれてのことなんだろうし。)
ところが 出口付近でこちらに向き直り、
「本当に、大丈夫かえぇっ!!」 さっきよりも声が通ります。
(さっき、大丈夫って言うたし。)言葉には出せませんが。
「どうして、そうなったがぁっ!」
(いや、ちょっと…。酔ってるでしょ。苦笑)
一般的には、松葉杖というのは一時的なケガへの対処法に見られがちなんだなと、日頃 自分にはない視点に気づかされました。
酔ってなかったら、なお良かったんですけどね。(笑)