第964回 「東京オリンピック2020」
7月24日
ついに、東京オリンピックが昨日開幕しました。新型コロナ禍で1年延期され、東京都を含め緊急事態宣言が出ている状況下、その賛否を二分されている中で。
オリンピックが利権まみれであることが明るみに出、スキャンダルで次々と辞めていった組織のトップ 竹田恒和氏や森喜朗氏。「復興五輪」の看板倒れでも 責任は取らずに開会式は欠席の安倍前首相、開催決断はIOC任せで責任回避の菅首相。演出スタッフも続々と辞任。様々な負の現状を目の当たりにし、国民が複雑な思いを抱えるのは当たり前でしょう。
さらに無観客になったため、900億円を見込んでいたチケット収入がほぼ消滅。しかしコロナ対策で新たな負担は増えているため、赤字の穴埋めをどうするのか、国と都がぶつかっているようです。傷を負わないのは、莫大なテレビの放映権が入るIOCばかり。
しかも台風が発生して、来週初めにはオリンピックに影響が出そうなことも心配です。
あまりにも複雑な思いを抱えるオリンピックなので…あえて良いところに着目してみます。
開会式で入場する各国の選手団の皆さんを見ていると、嬉しくなりました。
みんなでおじぎしたり、飛び跳ねたり、日本と自国の国旗を振ったり、あふれる喜びで顔を輝かせていた選手の皆さん。そりゃあ、人生かけてオリンピックに臨んでいるわけですものね。自然と応援したい気持ちになります。
ハイテクの1800機以上のドローンで空中に描かれた地球の美しかったこと!
それと対比して江戸を思わせる職人たちとか、50の競技の「ピクトグラム」の手作り感や温かみは、早速ネットで世界中から賞賛を浴びていました。
そしてメインスタジアムとなった、国立競技場。高額すぎるとデザインコンペ案を白紙撤回した後、あえて火中の栗を拾った隈研吾氏のデザインの素晴らしさには、感銘を受けました。「自然」を意識し、ふんだんに木を使い、風が通るデザイン。
屋根の軒とひさしには47都道府県の木材が使われているのは「全国の人が、心をひとつにするため」だそうです。各県がある方位にその地方の木材を使用するという徹底ぶりで、入場する3つのゲートの軒には被災地の木材を使ったとか。これこそが「復興五輪」の心意気ではないでしょうか。
観客席の色は「森の木の葉が落ちたような色に」と白・薄いグレー・黄緑・深緑・濃茶の5色の「アースカラー」。それらがバラバラに配置されており、人が少なくても賑わって見える構造が素晴らしかったです。あれが観客席がベッタリ一色なら、実に寒々しい光景になっていたでしょう。(席の写真はテレビもネットも著作権があり、お見せできなくてすみません)
まさかオリンピックが無観客で行われるとは誰も想像できませんでしたが、実際に開会式当日、無観客にも関わらず取材した外国メディアは、光のマジックもあり「人がたくさんいる!」「満席だ!」と驚愕したそうです。(笑)確かに、テレビでもそう見えましたよね。
隈さんは「オリンピックは満員でも、その後人が入らないイベントもあるだろうし、そういう時でも寂しくないデザインがいいなと思った」と語られています。結果として、隈さんの温かさと感性が、想定外の無観客の開会式を そう見せなかったんですね。卓越した超一流のプロとは、そういうものなのでしょう。
そうして、せっかく開催された東京オリンピックです、
どうぞコロナにも台風にも負けない輝きをと祈らずにはいられません。