第966回 「人を介する。」
8月7日 中村 覚
買い物の後、たま~に長いレシートをもらうことがあります。たくさん品物を買えば買うほどレシートは長くなりますが、紙面を使って広告をしてあるレシートもけっこう長いです。形が特異なので、ある時から ただ捨てるのはもったいない気がして、数枚に1枚ぐらいの割合でひっくり返して裏面にその日の雑感を書くようにしました。思い立った時にササッと書く。日記と違い継続という圧迫感もなくとても手軽です。
半年ぐらいの間にレシートが7~8枚たまりました。もうこれぐらい時間が経つと裏に何を書いたかはすっかり忘れています。せっかく忘れているので確認はしません。それらを封筒に入れ切手を貼って自分宛てでポストに出します。2日後ぐらいには家に届きます。届くというか、戻ってきます。(笑)でも、その時には一度人の手に渡り、ちゃんと消印も押され、単なる自己満足の物ではなく、どこか“箔が付いた”ようでちょっと嬉しくなります。
~で、これをどうするかというと 机の前に置いておきます。10年ぐらい経ったら、どんなことを書いていたのかな?と開封して読む。それだけです。(笑) ただの一人遊びも人を介すると広がる気がします。
こんな“人を介する効用”はちょっとしたところにも色々あると思います。
ある時、「商い」の語源は「飽きない」からきているのかな?とボゥ~っとしている時に浮かんできました。毎日の仕事に飽きては元も子もない。ずっとやっても飽きないことを商いに~みたいなことです。
私は商売をしているわけではないので、こんなことを考える必要はないのですが、しいて言うなら親が商売をしていたので息子があらぬ方向からでも商売について考えるのは自然な流れかと。(笑)
これをいつか友人に話したいと思っているのですが、こういう話をすると「また、中村がおかしなことを言っている。」だいたいそういう結果だというのもわかっています。(笑)
数ヶ月後、本屋でなに気なく「辞書から消えたことわざ」という本を手にしました。雑学王の類の本を読む時と同様、一期一会のつもりでパラパラっとやって偶然に目に留まったページを読んでみる。たいへん雑な読み方ですが、よほど興味のある本以外はいつもこんな感じです。
たまたま「商いは飽きない」が目に入ります。“商売は飽きずにコツコツと根気よくつづけることが大事”ということが書いてありました。取りとめようもない自分の思い付きはそれほど間違っていなかったと、ちょっと嬉しくなる瞬間でした。そして これで大きな後ろ盾を得た!と、よこしま?な考えの元、本を持ってレジへ。
後日、友人との雑談の時、タイミングを見計らい「商いの語源は飽きない~」俺はそう思うと言うと「それは違うだろう!」とバッサリやられ、その切り込みの速さたるや受け身も取れません。いや、でも実はねと買った本を出すと「へぇ なるほど。」と納得してくれました。後ろ盾って大切ですね(笑)当時の古文を例に出して、実際に使われていたことわざを載せています。
人に説明をするために買った「辞書から消えたことわざ(著者・時田昌瑞さん)」。買ってから読み進める内に、ありがたいことに人生の指標となることわざに出合えました。日々の暮らしに煮詰まり歩みが止まりそうなったら、生きる根源的な部分に今一度、光を…。
ちなみに私がとてもおもしろかったのは~
●案じるより団子汁。
●運は天にあり牡丹餅は棚にあり。
今では忘れ去られた珠玉のことわざです。(笑)