第973回 「新聞と読者委員」こぼれ話
9月24日
先日、高知新聞の「新聞と読者委員会」がありました。春と秋の新聞週間に、読者委員に意見を聞くといった会です。このほど任期の3年間を無事終えることができ、ずしっ!と重かった肩の荷がようやく下りました。
思えば3年前、ご依頼を頂いたときには「私なんかで役目が果たせるのだろうか?」と、非常に不安になったものです。高知新聞は物心ついたときからずっと愛読していますが、私には論じるほどの力はないし、ともかく勉強して役目を果たさなければと必死でした。
春は出されたテーマに沿って、1200字、原稿用紙3枚程度の原稿を書きます。昨年、2020年春のテーマは 新型コロナ下での「新聞と危機管理」という難しいものでした。報道のあり方も含めて新聞と危機管理について書くわけですが、そもそも専門分野ではなく、コロナの状況も日々変わり情報収集と分析で、もう大変!
トイレットペーパー争奪戦が起こり、店頭からモノが消え、コロナショックに陥っていた時期でした。記事の締め切りは3月末でしたが、日々状況が変わるので 原稿が古くなり、胃が痛む思いで ほぼ毎日原稿を書き直していました。
ここで、新聞の大きなハードルを思い知ります。タイムラグです。コロナ下で日々状況が変わるのに、原稿を出してから掲載されるのは10日以上も後。その時点で社会状況がどう変わるのか、まったく不明なのです。案の定、掲載された4月8日は、前日7日に初めて緊急事態宣言が出された、大きな転換点でした。読者の皆さまはそんなに前の時点で原稿を書いていることをご存じないので、現状と合っていない原稿だと「おかしい」となってしまいかねず…。書き方にあれほど苦労したことはありませんでした。
そして秋の委員会は、委員と新聞社の管理職の方々10名ほどで行われます。事前に3つほどテーマが決められ、その報道についての意見を述べていきます。これも毎回、テーマの記事を再読し、事前勉強をしないといけません。頭のいい人なら、すぐに的確な意見を言えるんだろうなぁ~とため息をつきつつ、安倍政権の総括やコロナ対応、オリンピックなどの紙面を見返します。オーテピアに行くと、様々な新聞の今年分が読めるので、とても助けられました。
委員会ではテーマごとに川村さんと福田さんと私の3人の委員が意見を述べていき、新聞社側がそれに答えたり、質問をしたり、論を膨らませたりします。その様子を若手の記者さんが同席し、取材します。それぞれの委員によって視点が違い、川村さんはIT関係に強く、福田さんは大学の視点。じゃあ私は?年齢的にも、社会全般から見てなのかなぁ~と悩みつつ、まとめていました。
後日、ゲラと呼ばれる新聞紙面のレイアウトにした校正刷りを送って頂き、原稿をチェックします。数時間もの話を簡潔にまとめると、新聞記者目線ではこうなるのかと勉強になりました。
原稿を練り上げるのと違って、座談会はどこを切り取られるのかわかりません。その場でのやりとりも 全体を俯瞰しつつ、臨機応変に答えていくのが難しくて。しかもそれらが紙面として残るので、やり甲斐はありますが大変でもありました。それでも色々な方に「筒井さん、新聞 読みましたよ!」とお声がけ頂けると嬉しくて、とても励みになりました。
日々、多くの記事を休みなく出し続けていらっしゃる新聞社の方々を改めて「すごい!」と感じずにいられません。お陰さまで、長年の憧れだった高知新聞に関わらせて頂けたのは、本当に光栄でした。紙面をお読み下さった皆さま、高知新聞社の方々、本当にありがとうございました。