第976回 「なってみなけりゃわからない」
10月15日 中村 覚
少し離して見ないと書いてある字がわかりづらく、本を読んでいても20分ぐらいたつとショボショボしてきて目が疲れます。こんなことがしばらく前から続いていましたが、一過性のものでその内 放っておけば治るだろうと気楽に考えていました。でもいっこうに治る気配がなく、これがもしや老い? えっ 病院ですか? 行けば何らかの病名も授かり自他ともに認める公式の老いになってしまうので、しばらく先延ばしです。
考えてみれば、白髪も増えてきたので目にきてもおかしくありません。ただ白髪の場合はたいして困ることはなく、染めれば もう少し若くは見えるのかな?くらいのことです。ところが目の老化は不便さが付いて回るので身に迫るものがあります。
中学か高校の頃、好きなマンガを集めていて、年がいってお爺さんになっても読みやすいように、通常のコミックのサイズより一回り大きい愛蔵版とかで集めておく必要がある!などと半分 冗談で考えていましたが、冗談ではなくなってきました。マンガもさることながら、この先、宿敵となるのは文庫本です。収納が便利なのでちょこちょこ買い集めていますが、20年後、ページを開けば「なんだ、これはっ! 飼い犬に噛まれるとはこのことか!」
多分、こんな感じかと。(笑)
実は目よりも衝撃だったのが、指先の変化です。自分では思ってもいなかったのですが、かなり乾燥しているのです。これは今までずっとお肌の手入れを怠ってきたツケなのでしょうか? 聞いてないぞ。これのなにが困るかというと~
買い物をした際のレジ袋が有料になって久しいですが、店によっては液晶画面の「袋を購入」のボタンを押した後、 平らに積み上げられている袋の山?から購入した枚数分だけ自分で取る仕組みになっています。 で、1枚取って商品を入れようと袋の口を開けようとするのですが、袋の口はビタッとくっ付いたまま いくら指の腹でずらそうとしても開きません。「なんで?」というより、もうイライラです。以前はこんなことなかったのに、最近の袋は質が悪いなぁ。原因は自分の指先にあったのです。
後ろで次のお客さんが並んでいたりすると余計に焦ってきます。仕方ないので爪の先で少し破いて指を突っ込み 本来あるまじきところから袋を開けます。こんなことを数回やってからふと思い当たることがありました。今まで何度となくスーパーのレジで見た光景です。○百○十○円という支払い金額を全て小銭で払おうとする年配の方の姿です。おぼつかない手先で財布からゆっくりと小銭を取り出すわけですが、お札やポイントカードで払えば、もっとレジがスムースに運ぶのに。こんな不届きな考えをしていたのはどこのどいつか!(笑)
今回のようなことは「生老病死」のほんの入り口も入口 入門編ですから、たいしたことでないのは自分でもわかっています。でも こういった事から順を追って少しずつ体験していかないと、急に難問や応用問題が出されてしまうと、それはそれでまたちょっと心の準備が…。
でも考えようによっては「生老病死」は新たな経験のきっかけであるとも思います。
生まれてこなけりゃ わからない。
老いてみなけりゃ わからない。
病んでみなけりゃ わからない。
………。
その先にあるのは全てが新たな経験。その真っ只中にありながら、どうやってゆとりを持って過ごすのか?
なってみなけりゃわからない。(笑)