第692回 「放送のリアル」
4月16日
熊本で震度7の地震が起こり、その後も大きな余震が相次ぎ、本当に心配です。九州の皆さまが、どうぞ一日も早く穏やかな日常にお戻りになれますようにお祈りいたします。
今日16日の土曜日の朝10時、私は高知さんさんテレビに向かっていました。
実は土曜日の12時からの「おちゃのまLive さんスタ!」という情報番組に出演させて頂く予定だったのです。しかし熊本地震が起こり「難しいかも…」と感じつつ、状況が流動的なため、ひとまず局に伺うことになりました。
私は独身時代、NHK高知でニュースキャスターを務めていましたが、民放へのスタジオ出演は初めてです。「さんスタ!」はこの4月から始まった番組ですが、高知らしい明るさ満載で、日頃から拝見しているので楽しみにしていました。
まずはディレクターのTさんにお目にかかり、打ち合わせです。何かと細やかに対応して頂き、助かりました。
1時間番組で、台本は6ページにわたっていました。関係スタッフの方々は25名ほどでしょうか。キューシートと呼ばれる番組進行表は、「VTR」「中継」「CM」「モニター」などが一覧でき、秒単位で計算されています。
その後はリハーサルでスタジオに移動です。テレビで見慣れた色鮮やかで可愛いセットが並んでいます。
イスに座ると、カメラが目の前に3台。ピンマイクを付けます。あー懐かしい、この感じ。何とも言えない、スタジオの空気感です。スタジオって、独特の時間が流れているように思えるんですよねぇ…。
司会の合田泰吾アナウンサーはとてもフランクながら実際お会いすると落ち着いた風格があり、和田早矢アナウンサーは目がくりくりして可愛らしい美人さんでした。リハーサルが始まり、私はコメンテーターとしてご紹介頂きました。
時間がわかるよう、秒針が付いた大きな時計が目の前にあります。以前いたNHKと違ってCMがあるので、タイム管理が難しそう。
VTRを受けての感想、中継先の玉井アナウンサーとのかけ合いがうまくできるかなど、それぞれのシーンを確かめていきます。若い司会のお二人の「さんスタ!」らしい楽しい空気感がとても居心地良く、あっという間に30分ほど時間が過ぎました。
リハーサルが一通り終わって、本番まで休憩です。無人になったスタジオで許可を頂いて、日頃は見られない角度からのスタジオ風景を、コラムをお読みの皆さまにお届けしようと、撮影をさせて頂きました。
床に貼られている「ばみり」です。立ち位置や小道具の場所などに付けられた目印のテープで「和田イス」「ごうだ」などと書かれています。
ライトは昔に比べて、少ないのに明るいなぁ。小型になったカメラと共に、技術の進歩を実感しました。
地震などの災害直後の情報番組というのは、放送する側も悩む所です。そのため「さんスタ!」も今回はオープニングの楽しいタイトルは抜きにして、司会お二人の2ショットから入り、報道センターにつなぎ、それから番組に返る…といった流れを予定していました。
東日本大震災の後、震災映像ばかりが一週間ほど流れ、それで心の病を発病した方が多かったことをご記憶の方もいらっしゃるでしょう。実は私の長女がまさにそうなってしまい、いまだに回復しきっていません。(そのあたりのことは第469回「新たな試練」にも書いてあります。)
今回も「地震、恐い」と言うので地震映像は極力見せないように、注意を払っています。そういったこともあり、テレビをご覧の皆さまにもひととき、ホッとする時間を味わって頂く選択肢を提供したかったのです。スタッフの方々にも了承してもらい、それをオープニングで少しお話しさせて頂こうと思っていました。
本番45分前になってTディレクターがいらっしゃって「申し訳ありません、やはり飛びました」。フジテレビの地震特番になり、ローカル番組は中止になったのです。
これがまさに、放送のリアルです。でもこういったことはめったにあるわけではなく、ディレクターも初めてとのこと。貴重な現場を見せて頂いた体験となったわけです。「ぜひ改めて来月に」とおっしゃってくださいましたが、私のスケジュールが7月初めまで埋まっているため、改めて仕切り直しとなりました。
「さんスタ!」の皆さま、ありがとうございました!またよろしくお願いいたします。
その後、主人と長女と一緒に一宮神社にお参りに行きました。
九州の雨がひどくなりませんように。
どうか一日も早く地震が収まりますように。
被災なさった皆さま、どうかご無理をなさらず、
ご自身をいたわってお過ごしくださいますように…。