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ウィークリーN
第105回●2004年11月14日(日)

ブレイク「障害者センターでの自己表現力向上講座」


 ここのところ、かなり重い連載が続きましたので、お読み頂くみなさまもお疲れかもしれませんね。今回は、ちょっとブレイクしたいと思います。
 
 先日、私は高知市障害者センター主催の「自己表現力向上講座」を担当させていただきました。障害のある方はやはり他人とのコミュニケーションの取り方が不慣れであったりすることが多いようです。そこで第1回目は「自己紹介」を取り上げ、健常者の方々と交流する場面を念頭に置き、うまく自己紹介ができるようにトレーニングしてみました。
 

 参加者は20歳前〜30代までの若い身体障害の方々5名です。それにピア・カウンセラーといって、同じ障害をお持ちの生活指導や相談に乗ってくれる40代までの方々3名で、計8名。

  まず、「私は〜です」という、自分についての情報を、できるだけ書き出すという作業をやってもらいました。たとえば「私は40代です」とか「私は青い色が好きです」など自分の個性についての情報を、本当に何でもいいので書きます。しかし、あまりこういう作業に慣れていない障害者のみなさんは結構悪戦苦闘していました。それから、個人発表です。3つくらいしか書けない人、20近く書ける人、様々です。
 
 次に、「私の障害」という分析シートを書いてもらいました。これは私のオリジナルです。障害者も健常者も、同じ社会に生きる仲間として、本音で交流しあえるといいですよね。また、障害者の手助けをしたい、交流をしたいと思っている健常者も実は多いと思います。
しかし、健常者が戸惑うことに、「自分がどのように障害者と関わればいいのか?また、できること、できないことが相手によって違い、わからない。何を手助けすればいいのか?」ということがあるのではないかと思います。

実はこの解決法は簡単です。障害者が自分のことを、始めに障害のことも含めて語ればいいのです。

@ 自分はどういう障害で、
A どこに支障があるのか。=自分にとって困ることは何か。
B して欲しい手助けは何か

これを書いてもらいました。ここまではわりとスムーズに運んだのですが…。最後に最も重要な部分として、
C 反対に、自分が人にしてあげられることは何か、を書いてもらったのです。これは相当難航しました。ほとんどの受講者が書けなかったのです。「今まで何か、学校や家族にほめられたことはないですか?」「…ありません。」うーん。

 障害者は何かと他人に手助けしてもらうことが多いですが、それに慣れきってしまうと、人に何かしてもらっても、それを当たり前だ、と勘違いしやすくなるように思います。これは非常にまずいことです。誰でも感謝されるのは大好きですが、何かしたことに対して、「当然」という態度や、あるいは口先だけで「ありがとう」と言われると、ムカッとするものですから。そこに当然、良いコミュニケーションは生まれません。

 また、人間は「してもらう」ことばかりでなく、「自分が人に何をしてあげられる」かと考え、実行することが大切だと思います。

 はじめは「できることはありません」と言っていた受講生のみなさんも、「Aさん、お料理が好きだって言ってたね。それを作ったら、人に食べさせてあげられるんじゃない?」などと言うと初めて「ああ」と思い当たるのです。それは、ささやかなことでもいいでしょう。たとえば、あいさつ・笑顔などです。

 特に、障害者の方が笑顔を向けてくれることは、介助者や家族にとって、とても励みになるものです。小さなことでも「ありがとう」と言ってくれたり「うれしい」と素直に表現してくれると、それがこちらのやる気に大いにつながるのです。そして多分これは障害のあるなしに関係なく、基本的にはどこのご家族でも同じではないでしょうか。

 障害者にできないことは確かに健常者よりも多いでしょうが、実はできることも沢山あるはずです。そしてそれらは、自分が生きていくための「武器」にもなるわけです。いや、どちらかというと武器よりも宝物、でしょうか。ぜひ、その宝物を大事にして欲しいと思います。そこから自分を大切にする「自尊感情」も生まれてくるはずだし、自分を好きになる、自分に自信を持つことにつながってゆくはずです。そしてそれが、豊かな人生につながっていくのではと期待しているのです。


   
 
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