物心ついた頃から同居していた祖母が亡くなった。そして、父が悪性の脳腫瘍を発病。母はわざわざ大阪の病院にまで父を連れて行き、手術してもらった。幸い一命をとりとめることはできたが、それから父の入院生活は何年間も続き、母はとても私の方まで手が回らない状態だった。
そして、もうひとつ。
気がつくと、涼歌の片方のまぶたが下がっている。小児科の先生は「結膜炎では?」ということで目薬を差したが、一向に良くならない。片道5時間ほどかけて、高知市まで出て、かかりつけの眼科に行く。
「これは、重症筋無力症じゃないですか」という結果。はぁ?何ですかそれ。
涼歌は10万人に1人という、重症筋無力症を併発したのだ。筋肉に力が入りにくくなって、脱力状態になる病気である。珍しい病気で、夫も最初の医師が分からなかったのは無理もない、と言う。涼歌は眼瞼型と言い、まぶたが落ちてくるタイプ。放っておくと物が見えにくくなり、視力にも影響が出るとのことで、夫の母校
自治医大の教授の指導のもと、夫が主治医で投薬治療にあたることに。やっと脳性麻痺、という事実を乗り越えられたと思ったらこれである。脳性麻痺は千人に1人だから、この2つの病気を併せ持つのは、単純計算すると1億人に1人
ということになる。
1億人に1人!日本に、たった1人だ。そう思うと、「すごいじゃん」と、もう否定の気持ちは生まれなかった。この2つの病気は涼歌のパーソナリティ=個性なんだ。
そうだ。人と比べるから「まだ座れない」「まだ歩けない」とか、できないことばかりに目がいくんだ。比べようのない個性なんだから、この子のありのままを受け入れなくちゃいけないじゃないか。
それからは、ずいぶん楽になった。物事というのは、自分の見方次第で大きく変わる。できないことではなく、できることに目を向けるようになってから、私は断然幸せになれた。涼歌は泣き出したら相当泣き方がひどかったが、「元気だなー」と思う。2歳まで離乳食から脱せなかったが、「食べることができる」と思う。笑う。「笑える」と思う。
当たり前だったことの一つ一つが、とてもありがたく、嬉しく、いとおしいことなんだと再認識できるようになった。
(このあたりは第33回 「720分の1の確率、1億分の1の現実 」をご参照くださいね)
どん底に落ちれば、後は這い上がるだけだ。私って意外にタフだったのね、と思う。
しかーし!まだここで安心していてはいけないのでした。
まだまだドラマは続くのです。
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