HOMEへ戻る 研究所案内研修プログラム実 績セミナー情報お問合せ
|WEEKLY “N”|T医師のひとりごとすずかの気ままにDO!
 
ウィークリーN
第112回●2005年1月5日(水)

足跡10「吉岡たすく先生との思い出」





  みなさま、あけましておめでとうございます。
良い新年をお迎えになりましたでしょうか?
今年もどうぞ、人・みらい研究所をよろしくお願いいたします。
 
 さて、 昨年は障害児の子育てのこれまでを、一母親の立場から出産当時より3歳まで書き連ねて参りました。この時期は私にとって、人生の中でも相当ハードなものでした。しかし、そういった中でも支えてくださった方々のお陰様で、今日の私があるわけです。本当にありがたいことだと感謝しています。
  今回は その中でも、私にとって大恩人とも言える吉岡たすく先生について、書いてみたいと思います。

たすく先生と
  吉岡たすく先生 は、「テレビ寺子屋」(テレビ静岡制作)でユーモアあふれる子育て論を語り、全国の多くのファンの心をつかんだ、日本を代表する児童文化研究家である。祖母から「この先生のお話はいいよ」と薦められ、一度TVを見て以来、私はすっかりファンになってしまった。

 先生は大阪で小学校の教諭・校長などを勤められ、幼児教育と童話の研究の傍ら、執筆活動と全国各地での講演活動を続けられた。子どもの立場に立った優しい眼差しとソフトな語り口で「テレビ寺子屋」スタート時からのレギュラー講師をなんと23年間お勤めになった。 温かな語り口、母子に対する優しい目。それでいてユーモアたっぷりで、笑いながら話に引き込まれると いつのまにかほのぼのとした気持ちで一杯になる。そういう先生だった。当時は土曜日の朝6時からの放映だったと思うが、かかさずVTR録画してチェックしていたものだ。

 そのうちテレビだけでは飽きたらず、片っ端から本を購読しては読んでいった。その中に描かれている母親像は、明るくてたくましく、「こんな母親になりたい」と思わせるものだった。成績ビリの子供に「あんたみたいなビリがおるから、1等の子もできるんや、だいじない、だいじない」と言ったある母親。(私なら、こんなことが言えるだろうか?いや、こういう時こそ、そう言える母親になりたい…。)先生のご本の中で、私はあるべき母親像を学んでいったのだ。

 「お母さんは明るくて、ちょっと抜けているのが一番いい」。先生はよくこうおっしゃった。それを聞くと、肩の力が抜けていく気がした。なあんだ、地のままでいいんだ。そう思うと、とても楽になった。

 1〜2年ほどして、先生が高知に講演にいらっしゃるということをスーパーに張られたポスターで知り、申し込みをしていそいそと聴講に出かけた。せっかくなので「いつもテレビを楽しみにしています」というファンレターを書き、係の方に渡していただいた。その時にたすく先生が、「私はお地蔵さんが大好きで、全国のお地蔵さんを訪ねています。高知には、珍しい乳房のあるお地蔵さんがあるそうですが、どこにあるのかは不明です。どなたかご存じないでしょうか?」とお話しなさっていた。

 高校時代の恩師が民話などの分野で有名な市原隣一郎先生だったため、早速お電話し、それが香北町にあるらしいということを突き止めた。早速その旨をお手紙にし、ついでに「土佐のお地蔵さん」という本も同封した。

 たすく先生は驚いたことに、最初のファンレターに対して、すぐ丁寧なお返事をくださった。お地蔵さんの在処を書いた手紙にもお返事をくださり、私はお返事に「幸福のシミ」のお話をしたためた。「子供は神様から預けてもらったのだから、私はその信頼に応えなければならないと思う」という内容である。
  すると先生は、「いい勉強をさせて頂きました。ありがとうございました。」と、若造の私なぞにお礼をおっしゃってくださった。その上、先生の自筆のお地蔵様の絵を贈ってくださったのだ。その後も何度か絵をいただき、全部で3枚所蔵しているが、今でも大切に額に入れて、保管している。

 

写真は私がもっとも好きな1枚。
「ゆっくり芽を出せ 涼歌ちゃん 
雪に埋もれてあたたかい春を待つお地蔵さま」
たすく先生の温かな想いがあふれていらっしゃるようだ。

 驚いたことに、幸福のシミの話はその後、「テレビ寺子屋」で先生がお話なさった。私の思いに、賛同してくださったのだ。 その上、「ほのぼの子育て」というご本などにも、取り上げて頂いた。障害児の子育てに戸惑い、傷ついてボロボロだった心が、少しずつ自信を取り戻せ、ありのままでいいんだ、と思えるようになった。

 そういう意味で、たすく先生は恩人なのである。以来、先生と私のお手紙の交換は、ゆるやかに続き、全部で20数通になっただろうか。先生が高知においでになった時に、3回お会いした。上の写真はその時のものである。

 2000年5月、先生は惜しまれつつご逝去なさった。きっと今では天国からあのニコニコした笑顔で、子供達を見守ってくださっているのではないかなと信じている。


   
 
ご意見・ご感想お寄せください!
 
 
ページの先頭に戻る
人材育成研修・各種セミナー承ります。
Copyright(c)2002 人・みらい研究所 All rights reserverd.