HOMEへ戻る 研究所案内研修プログラム実 績セミナー情報お問合せ
|WEEKLY “N”|T医師のひとりごとすずかの気ままにDO!
 
ウィークリーN
第114回●2005年1月23日(日)

足跡12「保育所で学んだこと」


 
 最大の障壁を乗り越えてやっと入所した保育所は、長女にとってはパラダイスだった。

4月半ば、「クラスが落ち着いてから」ということで、夢だった保育所に入所。 4歳だったので、年長組の一員に加えてもらう。加えて1歳だった次女も、年少組に入れてもらった。
 
 長女の場合は1級の障害児ということで、加配の保母さんがついた。加えて私も慣れるまでは一緒にいてくださいと言うことで、クラスには担任の先生、加配の保母さん、私と3人の大人がいる状態。子供達はビックリしただろうけど、すぐ慣れた。 (私は一月ほどで行かなくても良くなったが)

 椅子に座ったままの長女を見て、子供達から
「なんで歩けんが?」
「どうして?」「いつか歩けるようになるが?」
次々質問が出てくる。もっともなことだ。初めはいちいち答えていたが、子供達はみんな同じことを時間差で訊いてくる。別の組の子供もいる。(こりゃあ、一度時間をもらって、ちゃんと説明した方が良いなあ…)と思い、保育所に申し入れをする。同時に子供達から質問を募り、それをまとめて紙芝居を作った。(高校の時、マンガ同好会だった経験が初めて役に立った。)

 そこで園の子供達全員、30人ほどを集めて、紙芝居を読んだ。一番苦労したのは、なぜそうなったのかという説明。子供達にわかりやすい言葉で、と「おなかの中にいるときに、ケガをして歩けなくなった」等という表現を使ったのではないかと思う。10枚弱ほどのものだったが、これは残念ながら、どこかへお貸ししたまま紛失してしまった。
  こうして一度説明をすると、矢のような質問は、以降ピタッとやんだ。子供と言えども、きちんと向き合って説明してあげることが大切なんだなあ、と教えられた。

 歩くこともできない彼女は人並みの10分の1もかなわなかったが、それでも保育所が大好きになった。彼女にとっては生まれて初めての家庭以外の「社会」ができ、優しい先生方と友達のお陰で食欲が増え、顔も生き生きと輝いてまるで人生に「張り」が出たよう。休みの日も、保育所のビデオを熱心に見るほどだった。

 子供達の社会にデビューさせれば、能力は飛躍的に伸びるはずと期待していたが、思った以上に大成功だった。また、子供達は絶妙な教育力を持ち合わせていた。長女ができないことは優しく手助けしてくれるが、できることは「すずかちゃん、これはできるろう。やらんといかん」と指導するのだ。先生に言われると半べそをかいたりしていたが、友達に言われると、一生懸命努力する。私は感心してしまった。子供の持つ力には、大人もかなわない絶大な影響力があったのだ。

 特筆すべきことは、言葉のシャワー効果だ。これは私が勝手に名付けたものだが、子供達の言葉をシャワーのように日常的に浴びることにより、長女は劇的に会話力が伸びた。言語療法士の先生と私が、それまで4年間、一生懸命指導してやっと20ほど言えていた単語が、なんと半年後に「ママ、行く」などの2語文が言えるようになり、1年たつと普通にしゃべれるようになったのだ。「卒園式の夜にはママが会に出んといかんから、おばあちゃん来てね」などと話せるようになったのだ。信じられない効果である!集団での刺激の力はすごい。おまけに言葉の成長と共に、 期待してなかったおむつまでとれた。

 無理を言っても入れて頂けて、本当に良かった、としみじみ感じた。何と言っても、子供には子供の社会に入れてあげることが必要だったのだ。また、障害児が入園したことで、他の子供たちも変わったようだ。弱者へのいたわりがより強くなったらしい。先生方も驚いたことに、一番おてんばだった女の子が、娘の面倒を一番よく見てくれたのである。「涼歌ちゃんがいなかったら、あの子のこういう面に、私たちも気付かなかったかもしれない」と言われ、嬉しかった。

 1年たったとき、他の保護者からこう言われた。
「涼歌ちゃんが入るとわかったとき、保育園のレベルが下がると反対した人もいたけど、入ってくれて本当に良かった。子供達は優しくなったし、世の中にはいろんな人がいるということもわかったみたい。」
嬉しかった。
 が、同時に世間の評判とは短期間で180°変わる無責任なものだから、それに縛られてはいけないなとつくづく感じた。

 
   
 
ご意見・ご感想お寄せください!
 
 
ページの先頭に戻る
人材育成研修・各種セミナー承ります。
Copyright(c)2002 人・みらい研究所 All rights reserverd.