やっと中学部の卒業式が終わった。卒業式でさえもクラス担任のA先生は相変わらず車いすのブレーキを足で蹴るし、A先生・B先生とも「卒業おめでとう」の一言もなかった。でもまあ、それでもいいでしょう。やっとこれで解放だ!…と思ったのは甘かった。実はここからが最大のバトルになったのだ。
数日後、中学部の連絡帳が返された荷物の中に1冊も入っていないことに気付く。第118回でも書いたが、「連絡帳はかけがえのない宝もの」であり、記録である。単に先生が入れ忘れたのだと思い、クラスのC先生に電話した。
「先生、すみません。荷物の中に連絡帳が入っていないんですが」
ところが返ってきた答えは驚くべきものだった。
「いや、中学部では、連絡帳を返していないんですよ。」
え、何ですって!?そんなこと、今まで保護者からも先生からも1度も聞いたことがない。
クラス主事のD先生に返して欲しい、と電話すると、
「連絡帳は高等部との連絡に使う必要があるので、渡せないんです。そう決まったので」
「先生ご自身もそうお考えですか? 」
「僕は渡してもよいと思うんですが…。では学部主事に相談してみます。どうなるかわかりませんが」
学部主事とはB先生だ。どうやら読めてきた。連絡帳には、今までのA先生とB先生の「外に出されてはまずい話」が沢山書いてある。よくこんなことを平気で連絡帳に書けるなあ、とあきれたものだが、なるほど、今年からは返さないつもりだったからなのか。
中学部でベテランの両先生が結託すれば、どうにでもできるはずだ。
そうはさせない。 校長先生に電話した。経緯を聞いた校長先生は驚き、
「中学部で連絡帳を返さないという話は聞いていないです。では明日、返すように私から指示しておきます」とのこと。安心した。…のも束の間。
翌日D先生から電話があり、「やはり渡せません」と言う。
「学部の話し合いで、そう決まりまして…」
これではらちがあかない。直接、夫はB先生に電話した。先生曰く、
「あれは高等部への連絡で使うものです。 連絡帳は個人のものではなく、学校との共有物です。中学部では返さない決まりがあります」
「初耳です。いつ、そんなことが決まったのですか」
「それは決めている最中ですが…、とにかく渡せません」
しかし、うちは泣き寝入りは絶対しない、と決めていた。 連絡帳は絶対に、返してもらう権利があるはずだ。
「連絡で使うものなら、コピーでもいいはずですよね。原本は返してください」
「いや、コピーならいいですが、原本は駄目です。だいたい卒業生6人のうち、1人だけ連絡帳が欲しいというのはおかしいのではないですか」
さんざんもめた揚げ句、「…そこまで言うなら渡しますが。ただし、条件付きです」
「どういう条件ですか?」
「高等部が必要だと言えば、提出すること」
「もちろんです」
「その他もあります」
「何ですか?」
「それは、今は言えません。渡す時に話します」
わけがわからない。何のつもりなのか?
校長先生に電話すると「そんな。返すことに学部会で決まったはずです。指示も出したんですが」
校長命令も平気で無視していたことが判明した。
結局、校長先生と「連絡に使う」高等部の先生に間に入ってもらい、無事無条件で連絡帳は戻ってきた。(当たり前だが。)後日調べると、やはりそれまで連絡帳は全員に返していた。ところが、うちが先生ともめたため、A先生とB先生は返してはまずいと学部会で「連絡帳は今年から返さない」ということを押し切ったらしい。しかし、他の同級生の保護者は「連絡帳、返しましょうか?」と先生から聞かれたそうだ。だが、うちには「中学部ではそうなっている」と嘘をつき通し、あくまでも返すことに抵抗したのだ。
今改めて考えると、これには問題が2つあったと思う。
@一部の先生が暴走して校長命令に背いても、誰もそれを制止できなかったこと
A 問題に対しての処分が転勤しかないシステムの甘さ
@について、他の先生はなぜ止めなかったかといえば、両先生の権力が大きく、逆らえない雰囲気だったようだ。もっともA先生ににらみつけられた経験のある私には、その恐さはよくわかる。民主的であるべき学校現場がこうだったのは非常に残念だ。しかし、慰めは後日心ある先生方が「あの時は止められなくて、本当に申し訳ありませんでした」と謝ってくださったことだ。
Aについて。 体罰問題を起こした先生もそうだったが、謝罪もせず、処罰はされず、単なる転勤で一件落着とされた。校長先生はお詫びしてくださったが、一般企業に比べると対応が甘すぎるのでは。複数の職員がトラブルを起こし、保身のため故意に嘘をつき、上司の命令に逆らい、信頼を著しく失墜したのだ。しかし、この程度では謝罪もしなくても許される、という現状には大いに疑問を感じる。また、転勤すればすべてリセットになるのだろうか?
教育界は「人を育てる」仕事であるはずだ。次に泣く生徒や保護者が出ないよう、「先生だから正しいとは限らないのよ」なんて言葉で子供に説明しなくてもいいようにしていただきたいと、切に願っている。
お読みくださいました皆さまへ。ご自分の体験談や、励ましのメールなどもお寄せ頂き、ありがとうございました。
読後感も悪く、心痛む問題にも関わらず 我慢してお付き合いくださいまして感謝しております。
高等部入学からはもっと楽しい話をお届けできるかと思います。本当にありがとうございました。
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