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ウィークリーN

第134回●2005年6月12日(日)

  足跡26 「42歳の大学院入学



 2001年の晩秋、仕事から事務所に戻るとFAXが蛇のようにとぐろを巻いていた。何じゃこりゃ!?と思い目を通すと、大変懇意にさせて頂いていた当時のN銀行のS支店長からの、高知工科大学大学院への入学を勧める資料だった。
  高知工科大には日本の工学系大学院として初の「起業家コース」があり、そこに入学してみてはどうか?という。「筒井さん、こういう不況時には自己投資をしといた方がいいよ」というありがた〜いアドバイスだった。

 だが率直な感想としては「と、とんでもない!」。独立して2年目で、経営に関する勉強の必要性を感じてはいたが、起業家コース社会人対象のため、土日は朝から夕方まで講義である。長女の介護がある身としては、行けるわけがない。授業料も結構高い。それに、私はバリバリの文系人間である。理系の最先端である工科大学に受け入れてもらえる余地があるのだろうか?

 しかし、よく考えてみると私はビジネスに関しては、いつも人からチャンスを偶然のようにもらっていた。NHKを受験したのも父の勧めだったし、講師の仕事も友人からのたまたまの誘いだった。それらに「YES」と答えることで、大きな人生のチャンスをつかんできた、ということを思い出したのだ。・・・ひょっとしたら、これもそうなのかもしれない。

 考えるうち、(確かに大変だけど…、頑張れば何とかなるかもしれない) という気持ちが芽生えた。この頃涼歌は中3。あと3年すれば高等部も卒業し、在宅介護になるかもしれないと先が見えなかった時期だ。ひょっとしたら、これは私が系統立って勉強できるラストチャンスかもしれない…。

 夫に相談してみると、「まあ、やりたければやったらいいんじゃない?」とのこと。「でも、週末だから、涼歌の介護とか、ほとんどできなくなるけど」「でも、いつもじゃないやろ?ま、なんとかなると思うよ。授業料は大丈夫?」「それは何とかなると思うけど。」うーん…、どうしよう。

 悩んだ末、以前起業家セミナーで名刺交換させて頂いたことのあるコース長のK教授にメールさせて頂いた。「論文では、何か技術系の知識などが必要なのでしょうか?」と問うと、「そんなことはありません。起業家コースには文系の学生もいますよ。」とのこと。だったら、私にも門戸は開かれるかもしれない。こうして、ようやく大学院受験を決意した。 

 さあ、大変!人生の予定にはまったくなかった、42歳での挑戦だった。20年ぶりに手にする大学の卒業証明書、そして受験票や英文課題の提出。幸い1人ではなく、高知ではナンバー1の女性起業家Nさん、ファイナンシャルプランナーの資格を持つSさんという受験仲間ができたのは大変心強かった。40代のおばさんトリオの挑戦である。

 幸い3人とも、無事受験に合格。思いがけずもう一度、キャンパスライフが味わえることになった。入学式には、「確実に保護者に間違えられるよねえ〜」と照れつつみんなで出席。朝日新聞の高知版にも「おばちゃんトリオは意欲満々」と取り上げていただいた。貯金もはたいた。(…これで、もう中途退学はできない!背水の陣である。)

 入学してみると、さすが社会人コース、最高齢は高知の上場企業の社長Nさん、63歳。すごい。平均は40数歳だったから、肩身は狭くなかった。最初は最先端の技術の講義にはついていけず落ち込んだ日々もあったが、そのうち自分のペースが次第にできてきた。1年目の土日は結局ほとんど全部潰れてしまい大変だったが、夫はかなり頑張ってサポートしてくれた。(感謝!です)

 また、3人の学友のバランスシートは絶妙だった。Sさんは東京教室で衛星授業を受講していたのだが、期限前に課題もきっちり仕上げる秀才タイプ。Nさんはバツグンの実務力を生かし、教授陣も一目置く存在感。間で私は、おたおたしながらなんとかついて行く、という感じだった。お互い、抜かっているところを補い合い、課題ができないのも「大丈夫!なんとかなるって」と根拠もなく励まし合い、それでもなんとか乗り切っていけた。

 論文には相当手こずったけれど、今となってはそれも良き思い出だ。実は先週も、半年に一度の論文発表の集合セミナーがあり、大学に行ってきたばかりだ。大学院に入学して、大阪・東京のみなさんとも知り合え、色んな情報交換もでき、仕事もコラボレーションしたり、講義にも少し関わらせて頂いたりと仕事の幅も広げることができた。
 
  その後偶然、涼歌の高等部担任だったI先生も、ある大学の大学院に入学なさり、多忙なお仕事をこなされつつみごと卒業なさった。二人で「論文は大変ですよねぇ〜。」「でも頑張りましょう!」なんて励まし合っていたが、 こういう社会人大学生が増えるのは大学や社会にとっても良いことなのではないだろうか。
  ともあれ、S氏の先見の明には、感謝するばかりである。

 

 
 
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