現場実習は、以前は作業所などで作業をしてみる、というのがメインだったようですが、最近ではデイサービスでの生活を体験してみる、というのが主流になってきているようです。それだけ、卒業後の流れが変わってきているからです。
普通高校の場合は進学・就職・留学などの選択肢が多様にあるのに比べ、若草養護学校の選択肢はとても少ないのです。
@福祉施設に入所する
A在宅で、デイサービスを利用する
B作業所などで仕事をする
C進学する
細かく分けて、この程度でしょうか。以前は@のパターンが多かったようですが、施設入所は次第に定員が一杯で、難しくなってきました。そこで、Aのデイサービスを利用する卒業生が多くなってきました。しかしこれも、もうすでに定員が一杯になり、確保が難しいのが現状です。Aのデイサービスに週2日、Bに週1日、というように別の施設を利用しないと行き場を確保できない、という人もいます。
若草でBの作業所に行ける生徒は期待の星とも言えるでしょう。仕事ができるのは、障害の程度が軽いからです。しかし、作業所での平均賃金を皆さんはご存じでしょうか?
・身体障害者通所授産施設で働く身体障害者 … 平均月額 2万2千円
・知的障害者通所授産施設で働く知的障害者 … 大半が平均月額1万円未満
一般企業などで就職する、という選択肢は、若草ではほとんど聞いたことがありません。しかし一般企業で働く障害者が、平均月額
25万円 の給与を稼いでいるのに対して、作業所ではその10〜20分の1というのが実情です。月額1〜2万円ですよ?「これは週給なのですか?」と質問した人もいたと聞きますが、その気持ちはわかります。本当に厳しい現実が、ここにあります。すずめ福祉会がくんせい工房を作ったのは、まさにこの格差を埋めたいという強い思いがあったからです。
Cの進学できる生徒は、若草ではごくわずかです。障害の程度が全体的に軽かった頃は専門学校などにも行っていたようですが。ですから大学進学など、夢のまた夢。大学進学した卒業生は、もはや伝説の域です。
今私は、普通高校で講演などの機会を頂くことがありますが、よく最後に
「みなさん、健康であること、働けることを、当たり前と思わないでください。感謝の気持ちを忘れないでください」とお話しします。今の時代、そんなことが心に響く生徒は少なかったとしても、そう言わずにはいられないのです。
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