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ウィークリーN

第167回●2006年1月29日(日)

  「へき地医療を支える医師の妻たちA」



 転勤族で孤立しやすい、へき地医療の医師の妻たちの大変さは前回お話しした通りです。

 自治医大の高知県の卒業生は、当時大学ができて間もないこともありとても仲が良く、色んな会合にも家族ぐるみで出かけたりしていました。が、あくまでも夫たちが主体なので、妻だけでコミュニケーションし合うといったことはあまりなかったようです。
  しかし、人間関係ができたと思ったら引っ越してまたやり直しで、しかも地域に気を遣う医師の妻たちは精神的に疲れがたまっていき、それは奥さん達に共通した悩みでした。 しかし医師の妻という立場のため、友人に話しても「そんなの贅沢な悩みよ」と、あまり親身になってもらえない という事情もあったようです。

 そこで十数年前、ある奥さんが「自治医大の奥さんたちに呼びかけて集まってもらい、一度お話ししませんか?」と提案しお世話して下さって、高知市のホテルに初めて集結したのです。
 赤ちゃんや子供を連れての参加もあり、全部で十数人集まったでしょうか。初対面の方もかなりいらっしゃいました。その日は2時間の予定をオーバーし、みんな似たような境遇や悩みなどを大いに語り合いました。

 気のおけないコミュニケーションを渇望していた人が多かったので、ブランド物を着て気取った会話をする人なんて1人もいず、「こんなことある?」「あるある!」「今、これに困ってて…」など、ホンネの話はあちこちで弾み、ずいぶんリラックスでき、心の洗濯をした感じでした。

 それから毎年、その懇親会を開くようになりました。幹事を持ち回りでやったり、みんなで家族紹介・赴任地の思い出・土地のおいしいものなどを紹介した冊子を作ったり。ごくたまには夜の部をやったりもしました。特に子供が小さい内は夜出かけることがなかったため、皆さんかなりストレス解消になったようです。自分自身を思い返しても小さな子供がいるうちは、ささいな息抜き(たとえば美容院へ行く)ことでもはばかられたりしたものですから。

 医者の妻の集まりというと、気を遣って大変じゃないかと思われるかもしれませんが、その会は正反対でした。後年、会の名称もつきました。「みずほの会」です。きれいな名前でしょ?でもその心は「みんな、ずけずけと、ホンネを言う会」です。この会のお陰でずいぶん精神的に助けられた奥さんは多かったようです。
  私自身も、夫が自治医大のルートを離れても仲良くしていただいて、今でもランチに行ったり、お茶したりといったお付き合いはあります。

 しかし、実はへき地医療の医師の妻達の最大の悩みはズバリ、子供の進学についてです。
比較的多くの家庭は子供を地元小学校に通わせますが、その後中学・高校となると、やはり進学校へ入学することが多く、それにつれて職場と家庭とのバランスに悩むことになります。家庭によっては単身赴任を選んだり、子供が寮に入ったり、あるいは地域から高知市内へ戻ったりと、対応は様々です。結局その問題が大きいため、ずっと地域医療に従事し続けるということが難しいのが現状のようです。

 我が家でも肢体不自由の長女を授かったため、県内で1校しかない肢体不自由の養護学校に通わせるためには「お受験」並に、高知市に帰らざるを得ませんでした。(実態は、かなりかけ離れていますが…。)夫は今でも地域医療が好きなようで、できれば郡部でのんびりお年寄りと会話しながら、「人を診る」診療をしたいと言っています。

 しかしそうすると私も仕事がありますし、長女を預けるデイサービスもないとやっていけない。結果的に家族がバラバラになるわけで、悩ましい問題です。なにせ、私たちには「自立」という子育てのゴールがないわけですから。

 そんなわけで、いまだに地域医療に従事なさっていらっしゃる自治医大の先輩・後輩の方々と、それを支えていらっしゃる奥さん達には心から敬意を表します。どうか、お体を大事になさって下さいね。うちは落ちこぼれ組ですが、また何らかの別の形で、そうした医療に関わらせて頂けたらと願っています。

 
 
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