|
今は、新入社員研修の真っ盛りです。今年はすでに250名ほどの新入社員さんに、ビジネスマナーや医療・福祉コミュニケーションの研修を行いました。その中で、特に心に残っている研修のことを取り上げたいと思います。
香川県の総合病院・回生病院の新入職員研修です。
|
回生病院は大変職員教育に熱心な病院で、今年からは新たに研修医も新人研修に参加するようになりました。一般的に研修医はこういった接遇・コミュニケーション研修には参加せず、独自のオリエンテーションを行うようですが、医大でも人間力の向上のためコミュニケーションについて勉強するようになった時代ですから、やはり必要なことではないかと思います。全部で30名ほどの受講生中、7名もの研修医のみなさんが新規に参加することになりました。
回生病院では2日間新人研修を行いますが、例年の新入職員研修も、看護師・事務職・検査技師・薬剤師・理学療法士とさまざまな部署の方が集まります。入社式を終え、学生気分がまだ完全に抜けきれないまま研修に来ますが、とても初々しく、学生のノリで盛り上がりやすいので、研修のテンションが最初から高い傾向があります。
2日間の研修では、グループワークなどで職種を超えた横断的つながりが形成されます。そのためとても仲良くなって、研修後も「同期会」を形成しているグループもあるそうです。こういった話は他の研修会でもたまにあるのですが、特に医療においては「チーム医療」というセクションを超えてのつながりが重要になってきていることもあり、後々役立つようです。 |
|
さて、1日目。緊張緩和のゲームもしたのですが例年に比べてどうも固い雰囲気。まあ1日目はどうしても座学中心なのでそうなりやすいのですが、コミュニケーションがあまり活発ではない感じ。そういったものは素直に研修レポートに表れます。「自分のこれまでの行動で、改めなければならない点があった」などと、そつなくは書かれているのですが、どうも熱意や深みが今ひとつのような。うーん…。 |
翌朝、研修会会場に30分前に行ってビックリ!研修医をはじめ、もうほとんどの受講者がそろっています。総師長でもある副院長にすぐお伝えすると「実は1時間前には、もうあの状態だったんですよ。」ということで二度ビックリ!!
私は、自分の間違った判断に気づかされました。1時間前からほとんどの受講生がスタンバイしてくれる研修会なんて、さすがに初めてです。受講生のみなさんの熱意に圧倒されました。(まだ集まっていなかったのは中途入社の方で、現場で働いていたそうです)
結局10分ほど前から研修を始めることができました。思わず素直に「みなさん、すごいですね!こんな研修は初めてです」などとお話をしたのですが、全員の顔が上がり、表情がほころびました。研修会が上向く兆候です。「これは講師として、頑張らねば!」と気合いが入りました。
|
|
最初は急遽予定を変え、昨日出した課題のグループディスカッションから始めました。最初はおずおずとといった感じですが、次第にコミュニケーションもとれ、場がほころんできます。そのまま、次々とロールプレイングやグループワークをこなしていってもらいます。研修を深めるにつれみなさんの顔が、充実感溢れた、輝く表情へと変わっていきます。 |
|
結果、2日目のレポートはどれもぎっしりと書かれ、具体的で、熱意が伝わってくる素晴らしいものでした。研修医や看護師などの職種の壁はまったく感じられません。
研修医の方も「同じグループの人たちは、今後も大切にしていきたい友人になりました。看護職の方たちとも、今後もずっと仲良くしていけたら」という前向きな思いを綴られていました。
別の研修医の方のレポートには、こう書かれていました。
|
「今まで病院で研修してきて、この研修で学んだようなことを実践しているような人をあまり見たことがない。“1泊5千円のホテルと5千円の病室”の話
(同じ金額を払っても、プライバシーや対応など違いすぎるのではという問題提起) を聞いて、やはりこの職も接客業なので、言葉遣いから気をつけていかなければいけないと思った。」
やはり、という厳しい現実。それでも前向きに頑張りたいという思いを伺い、勇気づけられました。さらに、
「ちょっとした気づかいようで、がらりと雰囲気が変わってしまう、というのを実践を通して勉強した。これから何十年たっても慢心のないようにしていきたいと心から思う次第です。」
という謙虚な文章は、 心に響きました。
こういうドクターの方々が現場にいらっしゃると、どれだけ患者さまの心が安らぐことでしょう。
どれだけのご家族が癒されることでしょう。医療技術が高いのはもちろん当たり前ですが、もう一つ、人間力という点において、こういうドクターの方々がぜひ増えていってくださいますように…!と心から願ったのでした。
|
|
|