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第223回●2007年3月4日(日 )

 「当たり前」のありがたさ

 

 数日前の夜11時過ぎのことである。やけに今夜はパトカーの音がする。何か事件だろうか。
 台所で洗い物をしていると、ふと焦げ臭い匂いに気がついた。ガスは切っている。おかしい。外からの匂いだろうか?

 窓を開けると、匂いが一気に強くなった。緊張が走る。近くで何かが燃えているのだ。

あわてて庭に出た。太い煙がもくもくと南の空へ流れていく。火事だ!
「火事や!」と二階の夫と次女に声をかける。うちは寝たきりの長女がいるので、何かあったときには避難が大変だ。二人とも、あわてて降りてきた。

 外へ出てみる。消防車やパトカーの回転灯が闇に浮かんでいる。すでに数台が集結し、消防車は消火栓から太いホースを伸ばしていた。 どうやら少し北の通りが火元のようだが、どこかはわからない。
 我が家はちょうど風下にあたるようで、白い煙がもくもくと流れてくる。風が強い夜だった。
「いかん、煙を吸う。家の中へ入った方がいい」と夫。そう言えば、火事の時っていろんなものが燃えるので、かなり有毒ガスが出ると聞いたことがある。一旦退却。

 30分ほどたって、再度外へ出てみる。もう、煙はまったく収まっていた。こわごわ火元の方へ歩いて行って見る。映画でも見た黄色の立ち入り禁止のテープを通りに張っているのが見えた。どうやらうちより2本北の通りの、すぐ東のあたりのようだ。けが人はいるのだろうか?野次馬などの人影はすでになく、やはり心配して見に来たらしい近所のおじさんが「○○さんとこの隣でしょうかねぇ」とつぶやく。とりあえず、もう心配はないようだ。安心して家に帰る。

 考えてみれば、非常時にこうしてすぐに集結してくれる消防車、パトカーはなんてありがたいのだろう。心細いときに、とても頼もしく見えた。当たり前かもしれないが、改めて感謝の気持ちが起きた。同時にこうして平穏無事にいられることを日頃は当たり前と思っているけれど、本当にありがたいことなのだなぁとしみじみ感じる。
 この体験をコラムに書きたかったのでこうして書いたが、どうしても現場写真は撮れなかった。不謹慎な気がしたからだ。

 翌朝の高知新聞に、火事の記事が出ていたので驚いた。夜11時半出火、と書いてある。市内版だけだろうが、深夜に記事を差し替えたプロ根性はさすがだ。記事によると、けが人もなかったとのことでホッとする。

 しかしもっと驚いたのは、その日のNHK昼のニュースに火事の映像が放映されたこと。そういえば現場はNHKの社宅のすぐ近くだった。仕事用のカメラは家にないだろうから、おそらく家庭用カメラで撮ったのだろうが、さすがはプロ根性。それに引き替え、自分はまだまだ甘いなぁと思ったことでした。

 

 
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