「最近、『私は間違っている』と思うんですよ」とおっしゃった横田会長の言葉に、私は大変驚きました。横田会長と言えば、ネッツトヨタ南国を『日本経営品質賞』を受賞した、全国トップレベルの企業に育て上げた方です。その方が「私は間違っている」とは・・・?
横田会長は、私の疑問にこうおっしゃったのです。
「自分が間違っている、と思うと、他人の意見を素直によく聴き、そして謙虚にいられるでしょう」
「でも、横田さんが間違っているとは、とうてい思えませんが」
「いやいや。 人間はその時には『これが正しい』と思っていても、半年、1年、10年たってふり返ってみたら、『あの時、こうしたらもっと良かったのに』という、より良い答えが見つかることがあるでしょう?」
これは、ちょっとした衝撃でした。私は今まで常に「自分は正しい」と思い込んできたことに気がついたのです。そして同時に「正しいことをしているから、正義はこちらにある」と思いがちでした。
「人間は、素直で謙虚でいることが大切だと思うんですよ。だからそのためには『私は間違っている』と思うことが、ちょうどいいんじゃないでしょうか」
…私は、とても大切な示唆を頂いたことに、ありがたい気持ちで一杯になりました。
その後、研修でこのお話を数回させていただきました。医療、福祉、サービス業。受講生のみなさんがたくさんこの話を聴いて、「私は間違っている、という話は本当にそうだと思いました」とレポートに書いてくださいました。特に医療などでは「これが正しい」と思いこみがちですが、そうすると一方的になり、双方向コミュニケーションが取れなくなってしまう恐れがあります。
悪いコミュニケーションの取り方に「○○だろうコミュニケーション」というものがあります。「多分、順調だろう」「誰かに頼んだんだろう」などと、確認も行わずに自分に都合のいい方に思い込んでしまう。それによって、問題が起きてしまいます。
良いコミュニケーションは、「○○かもしれないコミュニケーション」です。「用意してないかもしれない」「何か問題を抱えてるかもしれない」と悪い事態を想定して、それを防ぐために自らアクションを起こすものです。