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突然ですが、雑誌『ブルータス』の別冊の『極楽ホテル案内100 バック・ツー・ザ・ホテル』の中で、世界のホテル100選に、高知県のホテルが2つ選ばれたことをご存じでしょうか?オープンまたは大改装から2年以内の施設が対象で、日本からは17ホテルが選ばれています。
そのうち 1つは高知市にある「セブンデイズホテル」、そしてもう一つが室戸市にある「ウトコ
ディープシーテラピーセンター&ホテル」です。 |
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実はこの「ウトコ
ディープシーテラピーセンター&ホテル」は昨年オープンしたばかりで、高知市から車で2時間以上かかるアクセスの悪い室戸市のホテルということもあり、高知市内でもまだあまり知られていません。
11月のある日、ふと思い出してこのホテルのホームページを見てみると、なんと1人で泊まると、一番安いスタンダードでも1泊朝食付きが23,000円ということで驚きました。
高知市内のトップクラスのホテルと比較しても、高額です。 |
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もっと驚くこともありました。ネットで調べてみると、11月中旬から1月末まで、もうほとんど空きがない状態だったのです。部屋が17室しかないため、「なかなか予約が取れない」などというネットの書き込みもあり、「ここは一体どんなホテルなんだろうか?」とがぜん興味が湧いてきました。 |
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そこで12月、唯一空いていた日に急遽予約を入れ、実際見てくることにしました。
このホテルは、世界的メークアップアーティスト・シュウ ウエムラ氏とフランス人建築家がコラボレートして作られたそうです。
海洋深層水療法を取り入れたテラピーセンターが併設され、ぜいたくな部屋の広さや山海の幸ふんだんの料理が評価されています。 |
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私が興味をひかれたのは、このホテルのビジネスモデルです。従来の通過型ホテルではなく、滞在型ホテルでハイクラスの女性顧客をターゲットにするという戦略は 今までに高知になかったわけで、それが成功しているのはすごいと思いました。
せっかくなので、数回に分けてこのホテルのことをご紹介しましょう。 |
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「ウトコ」の名前の由来は
シュウ ウエムラ氏のウ、室戸のト、高知のコから来ています。仕事柄、シュウ ウエムラ氏は化粧水の水に着目していましたが、1998年、肌に良いミネラル分一杯の海洋深層水を使った化粧水を販売しました。海洋深層水とは、200メートル以上の深海にある水の総称で、太陽光が届かない為、細菌が少なくミネラルを豊富に含んでおり、清浄性も高いのです。(室戸市は、海洋深層水の研究施設を日本で初めて陸上で開設した場所です。)
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その後、ウエムラ氏は海洋深層水を使った飲料水を(株)ウトコという会社で作り始め、海洋深層水を使った、タラソテラピー(海洋療法)を超える「ディープシーテラピー」を立ち上げたのです。そのテラピーの効果を高めるためにホテルを造ったということで、それがこのホテルのコンセプト「海に住む」につながります。 |
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ホテルは昨年の平成18年7月13日にオープンした、まだ新しい施設です。オーナーのウエムラ氏の考えにより、オープン当初はスタッフに「未経験者」を募りました。(ただし、テラピーや厨房のスタッフは別)
経験者が持つこれまでの固定観念や既成概念は、お客様に対するより良いサービスの向上の妨げになる部分もあるからという理由だったそうです。地元や周辺地域の人を優先的に雇い、現在約50人の社員をかかえ、雇用創出にも貢献しています。 |
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オープン当初は敷居が高く感じられ「会員制らしい」という噂(?)もあったようですが、次第に女性誌などにも取り上げられ、現在は特に県外からのお客様に人気です。関東、関西からのお客様が多く、年齢層では30代の女性がトップですが、母親と娘さんとで一緒に訪れるケースもあるそうです。また、3ヶ月に1度という頻度の高いリピーターの方もいらっしゃるとか。 |
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昼間は海洋深層水のプール、シャワー、海藻パック、ジェットバスなど何種類ものテラピーを数時間かけてこなし、夜は地元食材を使った健康的でリッチな食事で、楽しみます。理想は「ゆったりと2泊はすること」と経験者は語りますが、癒しを満喫するには、私も1泊では物足りなく感じられました。
(日帰りでもテラピーは利用可能です。平日で12,000円〜)
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「これからは、もっと地元のお客様に利用していただけると嬉しいです。県外からのお客様ならホテルは拠点・目的地になるけれど、県内の方に県内のホテルに宿泊していただけるということは、施設を認めてもらった証拠になると思うので。」とスタッフの女性はおっしゃっていました。
「世界のホテル100選」に選ばれたことも「光栄でありがたく思います。これからも一流をめざし、常にお客様の立場で、できる限りのことを提供したい。オープンして1年なので、まだまだ改善していかなければ…」と謙虚でした。
初々しさを感じられるのは建物ばかりではなく、何よりもホスピタリティーに溢れるスタッフの方でした。そしてこれが、ウエムラ氏がめざした「自分たちで作り上げるサービス」なのだろうと感じたのでした。
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