「ビジネスの厳しさって、たとえば?」
「そうですね。僕らと同時期に入社した新入社員が、あるときひどく叱られている姿を見たんです。それを見たときに厳しいなと思いましたが、同時に『ああ、上司が部下を育てよう、という意識があるなあ』と感じました。学校の中では、そういうものがなんだか、だんだんなくなってきているように感じます。」
え、それって、結構ゆゆしきことなんじゃないの?でも、若いとはいえ、臨時教員時代から高知県の教育現場を広く経験した先生がそう感じているのだから、そうなのでしょう。しかし、教育現場を外から見たからこそ、ビジネスの厳しさに気づけたというのは大きいですよね。
「それから今まで、知らないということが平気だったのですが、今は知らないことがありすぎたなあ、と思います。」これもまさに世界が広がったからなのでしょう。研修という異業種交流は、先生方にとって、実に貴重な経験になっているのだなあと感じました。
「僕はまだ、この仕事になれていないですから」と本当に一生懸命、相手の話を聴き(この聴く、は心を傾けて聞くという意味です)、相手の世界を引き出そうと努力しているIさんの姿は、プロのマスコミにも初心に返る、という大切なことを教えているようにも思います。
数学といえば私は学生の頃、「卒業してから実社会で、こんな難解な数学がどう役に立つのよ!?」と不満に思っていたクチでした。Iさんにその質問をぶつけると、最初の数学の授業の時、生徒達には「身の回りにあるものを見てごらん。(人工物は)すべて計算によって、こういった物が作られゆうがで。すごいやろ!」という話をするそうです。うん、確かにこれなら、数学が身近に感じられるよなあ。Iさんは子供達が笑うのを見ると、ご自分も本当に嬉しそうに笑います。こういう先生に出会えた生徒はいいなあ。
Iさんのような若い先生がいれば「これからの高知の教育界もきっと大丈夫!」と思え、嬉しくなりました。