目次から各社を取り上げてみます。
1.「日本理化学工業」― 障害者の方々がほめられ、役立ち、必要とされる場を作りたい
2.「伊那食品工業(株)」―「社員のための経営」、「戦わない経営」を貫き、48年間増収増益
3.「中村ブレイス(株)」― 「人を支える」会社には日本中から社員が集まり、世界中からお客様が訪ねてくる
4.「(株)柳月」 ― 地域に生き、人と人、心と心を結ぶ経営を貫いていく
5. 「杉山フルーツ」― 「あなたのお客で本当によかった」と言われる光り輝く果物店
この中の日本理化学工業は、鳩山首相が初めての所信表明演説で取り上げたことでも有名です。この企業はチョークの製造メーカーですが、50年前から障害者の雇用を行い、現在では障害者雇用率が70%を超えています。この会社が最初に障害者雇用をした時の話を読み、私も思わず胸を熱くした一人です。
昭和34年。日本理化学工業の社長に、養護学校の先生が中学卒業を控えた15歳の女子生徒の就職を頼みにきた。社長は初め「無理です」と断ったが、先生は何度も何度もお願いに来る。「就職が無理なら、せめて働く体験だけでもさせてくれませんか?そうでないとこの子達は働く喜び、働く幸せを知らないまま死ぬまで福祉施設で暮らすことになってしまいます。」―これにはついに社長も、承諾せざるを得なかった。
こうして、1週間の就業体験をすることになった。(今で言うインターンシップである。)
1週間だけの研修として2人の少女を受け入れたのだが、休み時間も気づかないほど一生懸命働く2人の姿に10数人の社員全員が心を打たれ、「どうかあの子達を採用してあげてください。できないことは私達がカバーしますから」と社長に詰め寄った。こうして、障害者の採用が始まった。
しかし、社長は疑問だった。彼女たちにとっては会社で毎日あくせく働くよりも、施設でゆっくりのんびり暮らした方が、幸せなのではないか?なかなか言うことを聞いてくれない時「施設に帰すよ」と言うと、泣いて嫌がる障害者の気持ちが初めはわからなかった。
そこで、ある席で禅寺のお坊さんにこのことを尋ねると、こう答えた。
「それは当たり前でしょう。人間の幸せとは
@人に愛されること
A人に褒められること
B人の役に立つこと
C人に必要とされること です。
このABCは施設では得られないでしょう。この3つの幸せは働くことによって得られるのです。施設や自宅でのんびり楽しく、テレビだけ見るのが幸せではないんです。真の幸せは働くことなんです。」
社長は、目からウロコが落ちた。必要とされて働き、それによって自分で稼いで自立することが幸せなのだと。
私も、本当にそうだと思いました。重度障害を持つ長女は働くことはかないませんが、自立できることは素晴らしいことです。その力を大切にしたいし、して欲しいと思います。
今の若い人たちにも、ぜひこの話を聞いて欲しい。来週私は、ある定時制高校に講演に行きますが、とっておきのこの話を披露したいと思っています。
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