(中村 覚) |
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1年程前、父が自分の畑から野良猫を拾って(連れて)きました。家に来た初日から父にだけはベッタリでした。なにせ父は畑の時からしょっちゅう餌をやって可愛がっていたからです。
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元々が半野生の猫は、家に馴れた後も、父以外の人間にはツンッとした態度で、愛想も無ければ、おべっかを使うこともなく我がもの顔で暮らす日々。このクセモノは、最初からたいして可愛くありませんでした。
父はそんな猫を「ミーコ」と名付けてよく可愛がりました。
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父に対してだけは特別な態度。信じられないことに父が「ミーコ」と呼べば「ニャーッ」と返事をします。(私はそれまで犬はワンと返事をしても、猫はしないと思っていました。)
そして父がトイレに行けばトイレの前で、お風呂に入ればお風呂の前で、じ〜っと待つわけです。父には本当に忠義を尽くすというか、従順というか、とにかく父のことが大好き!畑から連れてきてもらったことに相当恩を感じているようでした。 |
ある日のことです。私が自分の部屋で用事をしていると、背後にミーコが。猫にすると「単に家の中を散策中」だったのでしょうが、私にしてみると、色々と引っ掻き回されそうで自分の部屋には入って来てほしくなかったわけです。
だから「この部屋には来たらイカン!」ということを、しっかりわからす必要があると思い、大声で怒ってかなり脅かしました。(ミーコには意味がわからなかったでしょう)それからというもの私の部屋には入ってこなくなりましたが、これ以上ないくらい更に嫌われたようでした。
それからというもの、私が動けば、私が居ない部屋の方へサッサと隠れるようになり、餌をやっても、私があげたものは絶対に食べなくなりました。でも、こういう嫌った相手を徹底的に嫌う猫の態度には、「根性有るなあ」と感心したのも事実です。 |
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ところで、こんな猫とも今年の2月の父の入院を機に、接し方を変えました。入院して最初の数日間、ずっと外で父の帰りを待ち、家にも入らない、そんなミーコの姿を見ていると「お前も一番頼れる人がいなくなって、さびしくて大変やろう」、その気持ち、わかるわかる。
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それからというもの「さあ元気を出せよ」と、手の平を返したように、一方的な私からの仲直りです。「これからは、家の中で好きにどうぞ、もう脅かしたりもせんき。」
仲直りの要となったのは市販されている猫の餌でした。予想外にあれは効きました。
大好物らしく、お尻すりすりしてくるようにまでなりました。
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そして先週のことです。3ヶ月程、入院していた父が久しぶりに外泊で家に帰ってきました。
「ミーコ、よかったねぇ、大好きなお父ちゃんで!」
しかし、ミーコはその日、夜遅く帰ってきたので、既に布団の中で熟睡している父との再会となりました。 |
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3ヶ月前と同じ部屋、同じ布団で寝ている父を見て・・・・・・・・ビュッと逃げ出したんです。「なんでよっ!?」 |
色々とミーコの言い分もあるでしょうが「でもまぁ、今のおまえがあるのは誰のおかげよ?」と。
これを考えると、父が不憫で不憫で。
「犬は3日の恩を3年忘れず、猫は3年の恩を3日で忘れる」、これって本当っぽいなと思った次第です。
今もミーコは元気に暮らしています。 |
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