傾聴の技法に「オウム返し法」というものがあります。高齢者や話の聞き取りにくい人などに特に有効な手法ですが、相手の言葉をくり返すやり方です。
「昨日、とても辛いことがあってねえ…」
「そう、辛いことがあったの」
というように 相手の言葉を繰り返すことで自分の確認にもなるし、相手にも「分かってくれてるな」という印象を与えられるものです。これ、高齢者の福祉施設などで研修メニューに入れると、「そうそう〜!」と盛り上がるものなんですね。
「お年寄りの人と、何を話したらよいかわからない」という学生の感想が以前あったので「こういう方法もありますよ」と取り入れた演習なのですが…、これが大学生にはすこぶる評判が悪いのです。
「ちゃんと聞いてくれてない感じ」「イラッとする」など…
もちろん、中には「聞き取りやすかった」などと評価してくれる学生もいますが、「評価する」:「評価しない」は1:4くらいの感じです。
そういえば「去年もこれ、同じようなレスポンスだったな〜」と思い出します。同じ技法なのですが、いったいなぜ年代によって、こんなに感じ方が違うのでしょうか?
考えられるのは、コミュニケーションの違いです。若い世代の会話はスピードも展開も早いものを好みます。
A→A’→B→B’
というようなまだるっこしい会話ではなく、
A→B→C→時にはDを飛ばしてE というような「話をふくらませる」会話に慣れているのでしょう。
対して高齢者のコミュニケーションの目的は、「共感してもらい、安心したい」「繋がっていることを確認したい」というのが多いのかなと思います。だからオウム返しが有効なんですね。
もちろんどちらが良い、悪いではないのですが、そういった年代の感じ方の違いというものを認識しておかないといけないのだなと、改めて考えさせられました。例えば上司が部下の話を聞く時にも、こういったことは大切になるでしょう。その年代のニーズや感性に合った話し方がいいのだなぁと、改めて感じた経験でした。
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