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|WEEKLY “N”|T医師のひとりごとすずかの気ままにDO!
 

第469回●2011年12月9日(金)

「新たな試練

 今年は日本にとって、本当に試練の年でしたね。
東日本大震災は、たくさんの人たちの命を奪い、生活を変えました。
そして台風、世界的な経済危機、タイの大洪水…。
思い返しても心が痛みます。

 実は、今年は我が家にとっても新たな試練の年でした。

 みなさん、大震災後はニュース映像が、どのTV局でも朝から晩まで流れたことを覚えていますか?
それによって不安に襲われ、精神的に不安定になったり、病気になってしまう人が増え、大きな問題になりました。
 そしてまさに長女・涼歌(すずか)も、その中の一人になってしまったのです。

 彼女は弊社のコラム「すずかの気ままにDO!」の担当者です。(もう3年ほど、更新ができていませんが)。以前からお読み下さっている方はご存知のように、身体障害がありますが人との交流が大好き。今は、車椅子でデイサービスに通う毎日です。

 そんな涼歌の様子がおかしくなったのは、震災が起きて1週間後でした。ニュース漬けになっていた頃です。
「幼稚園教諭の資格を取った」などと現実とは違うことを言い始め、夜も眠らずに興奮して一晩中しゃべったり笑ったりし、 食事を拒否するようになりました。躁鬱(そううつ)病の躁状態に似ていましたが、現実認識ができていないのがより深刻でした。

 こんなことは去年まで24年間、一度もありませんでした。私たち家族は何が起きているのか分からず、大変混乱しました。もちろん心療内科にも行きましたし脳波の検査もしたのですが、原因はまったく不明。手の打ちようがありませんでした。いわゆる精神障害を発病してしまったのです。


 精神障害を起こしてみて、身体障害とはまったく違う大変さを痛感しました。家族が精神的に不安定な状態に巻き込まれてしまうのです。
まったく食事をしないと衰弱するので、口を無理矢理でも開けて食べさせるのは大仕事。
夜中じゅう、大きな声で独り言を言うので、家族は夜眠れなくなりました。
 精神安定剤を使っても、やっぱり朝4時過ぎから起きて話しています。明るい話ならいいのですが「○○さんとは、もうお別れです」などという暗い話ばかり。夜眠れないまま昼仕事をするのは、こっちが参ってしまいそうでした。

 初めは「身体障害に加えて、なぜ今になって精神障害まで発病してしまったのだろう…」と辛くて、半月くらいは泣きました。 「なんとか治る方法はないものか」と、わらをもすがる思いでお参りに行ったり、大好きなケーキ断ちをしたり。
 しかし、以前の身体障害を乗り越えた経験があるので、そのうち「泣いているだけでは何も変わらない。あるがままのこの子を受け入れなければいけない」という気持ちを思い出しました。

 で、こう考えました。夜中の独り言は「涼歌には好きなことをしゃべる権利がある。でも私には、それを聞かない権利がある。」今は自己防衛のため、耳栓を使っています。
それでもうるさい時には、好きな音楽をイヤホンで聴くとあ〜らフシギ、眠れます。(笑)

 こういう状態になっても、通っていたデイサービスは受け入れてくれているので、本当に助けられてます。そうでなければ、家族だけで介護はできないし、私は仕事を辞めなければならなかったでしょう。そうなると、私も鬱病になっていたかも…。家族には家族の世界があり、それを大切にすることによって、元気に介護を続けられるとつくづく思いました。

 最初は振り回されるだけだった私たち家族も、やがてありのままの涼歌を少しずつ受け入れてきました。涼歌の世界を「涼歌ワールド」とか名付け、今では面白がっています。その中には「◯◯仏教シリーズ」(当直仏教、フィギュア仏教など)ブッ飛んだ言葉もあって、その発想はすご過ぎ。芸人でないのが残念!(笑)

 ギャグとして使えるものもありますよー。
「はい、バババのバー」というフレーズは面白くて、何かごまかす時にピッタリです。(笑)
「お母さん、なんであれを買うのを忘れたが?」
「はい、バババのバ〜」(笑)って感じです。
 
 あのね、笑うって大事ですね。目の前で起きている現象は同じでも、それをどう受け止めるかで人生変わってくるんですよね。最初は「身体障害に加えて、なぜ今になって精神障害まで…」と辛かったのが、今では「身体障害、知的障害、精神障害とトリプル揃ったぞ!何も特典はありませんが、何か?(笑)」と笑えるようになりました。
すると、本当に楽になるんですよ。

 聞いていると大変だなあ、と思うかもしれませんが、私は別にそうは思いません。みんな言うと言わないの違いだけで、人生色々ありますよね?それぞれに大変なことは同じ。50年も生きてると、それがわかってきます。

 
でも、多分それが生きるってことなんです。大変でも、前を向かなきゃいけない。それが人として成長することにつながるんでしょう。だから、あまり特別のこととは思っていません。
むしろ「これを全部、人生の糧にしてやる!」(笑)と思っています。
すでに新たな障害のことを、人権や医療系の研修で何度かお話させて頂きました。
今は、 こういう体験を活かすことこそが私の使命ではないかと思っています。

 こういう私を、大学院時代の友人は「筒井さん、強いなぁ」と褒めてくれます。
「でしょ?私もそう思う!」と笑顔で答えつつ、すごく元気をもらいました。
その時気づいたのですが、私は「きれい」なんて言葉よりも、「強い」という褒め言葉が好きだなぁ、と

褒め言葉には色々あるけれど、私はこの言葉によってより元気になり、現状に立ち向かえる気がしたんです。


そういうわけで、コラム 「すずかの気ままにDO!」は再開できるかどうかわかりません。

でも、敬愛する故・吉岡たすく先生がお手紙に書いて下さった言葉、
「今日は雨でも、明日は晴れる。」
その希望を信じて、歩いて行きたいものです。

 

 

 
 
 
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