HOMEへ戻る 研究所案内研修プログラム実 績セミナー情報お問合せ
|WEEKLY “N”|T医師のひとりごとすずかの気ままにDO!
ウィークリーN
 

第489回●2012年5月5日(土)

 「雨障り(あまざわり)も、また良し。」 

 

 (中村 覚)

 先日のことです。その日は朝から昼にかけてよく晴れていたのですが、夕方あたりから曇り、ひんやりした風も吹き始めました。予報通り次の日は雨でした。

 雨が降ると外出時にはなにかと面倒です。遊びで出かける時ならまだしも、用事や仕事で出かけなくてはならない時の雨は邪魔なだけです。傘をさしても服や荷物はぬれ、車の運転をしても見透しが悪く不便です。しかも雨の中、夜間の運転となるとその視界の悪さは既に危険の域かとも思います。出かけなければならない時の雨は基本的に御免こうむりたいものです。
 ところが、特にこれといって外出の必要もない時に降る雨は歓迎です。家でゆったりとくつろいでいる感を演出してくれる気がして好きです。「出かけてもいいし、出かけなくてもいい。でも雨が降っているからまぁ家でゆっくりしようか」と、そんな落ち着いた気持ちにしてくれます。
 気持ちにゆとりがあるので、たまには雨の日に窓から外を眺めたりします。もちろん日頃から天候に関係なく外に目をやることはあるので、ことさら強調するつもりもないですが、「晴れの日は外を見る」、「雨の日は外を眺める」こんな違いが、気持ちの部分にあるように思います。

 この間も雨の日の夕方、外を眺めていると、なんとなく近所の家に目がいきました。そこの家の2階の窓に猫がいました。白いレースを背にグニャリグニャリと動いています。雨で猫も家でゆっくりしているのか。「あぁ、あそこの家はあんな灰色の猫を飼っているのか」と、近所に目が行くのもゆとりの一環かなと思います。

 ところで一口に「雨」と言っても色々です。パラパラと降る小雨から、空のバケツをひっくり返したような土砂降りの雨、そんな土砂降りと強風がタッグを組んだ台風の時の「自然、なめたらイカンぜよ」の豪雨など。


 雨に関する言葉も様々です。
普段はあまり使わない言葉でも、調べてみるとその音の響きや言い回しの面白いものがたくさんあります。
その例を少し。
雨隠(あまがくれ)=雨宿り。
雨構(あまかまえ)=雨具の用意。
本降り(ほんぶり)=すぐに止みそうにない降り方。
繁吹く(しぶく)=風が雨を強く吹き付ける。
降り籠める(ふりこめる)=外出できないほどに雪や雨が降る。


 私はこの最後の「降り籠める」、雨に降り籠められるという状態が好きです。あまりにひどい雨は災害につながりますので、もちろん程度ものです。しかし勢いよく降る雨を思う時は、災害など全然気にもしなかった子供の時の感覚のままです。
 小学校の頃、台風が来ると学校が休みになることがありました。休校に加えて、強い風と雨が気分を盛り上げてくれて嬉しかったです。ゴウゴウ唸る風に庭の柿の木が右往左往しているように揺られ、電線も鳴き、ガンガン降る雨粒に当たれば、刺すように肌が痛みました。ちょっと庭に出るだけでも根性を試しているかのような危険性、子供心にどれもが非日常でウキウキしました。

 豪雨や強風の影響で、外出を控え家に居たという子供の頃の記憶は、「楽しかった」の一色です。

 最近でこそ、高知には昔ほど台風も来なくなりました。暮らしを考えればありがたいことです。でも、今でも家に居る時に強い雨が降れば楽しくなりますし、普通の雨でも好意的に感じられるのです。
雨に降りこめられて外出できないことを雨障り(あまざわり)と言います。雨障りもまた良し、です。
  

 
ご意見・ご感想お寄せください!
 
 
ページの先頭に戻る
人材育成研修・各種セミナー承ります。
Copyright(c)2002 人・みらい研究所 All rights reserverd.